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楽天の新主将・茂木栄五郎は、
「脱・完璧主義」で背中を見せる。
posted2020/06/16 19:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
今年から楽天の主将となった茂木栄五郎は、その役割について、控え目な口調でこう語った。
「僕はあまり言葉で引っ張れるタイプではないので。もちろん『結果で引っ張る』と言ってもまだまだ未熟で、足りないところもありますけど、なんとか先頭に立ってやっていけたらなって思います」
主将として歩み始めたばかりということもあって、まだ「やれる」と断言する不遜さはない。それでもチームの先頭に立ち、自分の背中でチームを引っ張りたいと意欲的になれたのは、茂木にそれだけの根拠があるからだ。
去年の経験。それは、茂木に大きな収穫をもたらした。
プロ1年目からショートのレギュラーとしてキャリアを重ねてはいるが、デビューから3年目の2018年まで全試合出場は一度もなく、故障によって夏場に離脱していた。
「何が何でも全試合に出場する」
2019年。茂木はシーズンの目標をこの1点に絞った。そのために「妥協」も甘んじて受け入れた。
完璧主義を封印。
茂木は野球において「完璧主義者」だと、自分でも認めている。
打率などの数字もそうだが、それ以上に打撃ならタイミングの取り方やスイング、守備ならばゴロに対して足の運び方やスローイングと、形にも細かく気を配る。三振やエラーをしてしまえば不甲斐ない自分を引きずり、さらにパフォーマンスの低下を誘発してしまう。そんなマイナススパイラルに陥ることも珍しくなかった。
全試合出場を至上命題と掲げた昨年の茂木は、そういった完璧主義マインドを封印したのだ。パフォーマンス向上より、コンディショニングに精力を注ぐ。
「試合に出続けられる体を作れば、個人成績は後からついてくる」
そう自分に言い聞かせるようになった。