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ごっつぁんゴーラーは育成できるか?
インザーギの恩師3人と本人に聞いた。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2020/06/13 19:00
セリエAやCLで得点を量産したインザーギ。ユベントスとミランでスクデット獲得計4回、ミランではCL優勝2回にも大きく貢献した。
「すべてやつの本能に任せた」
当時のチームには優秀なFWが揃っていたが、この摩詞不思議な選手に惹かれるようになった指揮官は機能していたシステムを変えてまで、インザーギを起用するようになる。
「クロスにはニアに飛び込めということ以外は、すべてやつの本能に任せた。いつだったか、彼に指示したことがあってね。ふらふらとよく分からん動きをしていたから、こう動けと。しかし全然言うことを聞かず感じるままに動いて、最後には点を取ってしまった」
ゴールは誰にも教えられない。
インザーギと接して初めて知ったとカーニは言う。彼はいまでもフォワードの選手には特別な指示はしないという。
「傲慢な選手は、もうほとんどいないな」
インザーギはピアチェンツァで15点を決め、パルマヘとレンタル移籍。やがてアタランタヘと移籍し、イタリアを代表するストライカーヘと成長していく。
カーニはその後、インザーギのようなFWと出会うことはなかった。
「最近の若いのはやたら上手い。求められる役割も多様化しているからな。ただ、インザーギのような、ゴールさえ決めればいいんだというような、ある意味傲慢な選手は、もうほとんどいないな」
ミラノから列車で北へ約50km、霧がかったベルデッロの無人駅で降りる。セリエBのアルビノレッフェ練習場の一室で、インザーギのアタランタ時代の思師エミリアーノ・モンドニコに会う。
'96-'97シーズン、アタランタヘと移籍したインザーギは24得点を決めセリエA得点王となる。世界で最も守備の統制されたリーグで得点王の称号を得たことは、1年後に彼をユベントスヘと移籍させることになる。