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ごっつぁんゴーラーは育成できるか?
インザーギの恩師3人と本人に聞いた。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2020/06/13 19:00
セリエAやCLで得点を量産したインザーギ。ユベントスとミランでスクデット獲得計4回、ミランではCL優勝2回にも大きく貢献した。
最後はインザーギがいる方が彼のゴールで1-0で勝つ。
当時のインザーギはどう成熱していったのか。「インザーギの作り方? いやいや、そんなの無理だな」とモンドニコは笑う。
「あんな選手はどれだけ有能な監督やコーチが育成に努めても生まれない。100人対100人で試合をしても、最後はインザーギがいる方が彼のゴールで1-0で勝つね」
当時のアタランタはインザーギのために全員がプレーし、インザーギはゴールだけを目指す環境にいたという。
「あのシーズン、私はインザーギのためのチームを作ったんだ。彼から逆算して、その能力を最大限に生かすためのチームをね。ゴールにだけ専念させ、そして彼はそれに応えたんだ」
「ゴ―ルこそがピッポに惚れ込んでいるんだ」
90年代後半のストライカーには、おそらくはまだそれが許されていた。インザーギはオフサイドラインをふらふらとうろつき、ドメニコ・モルフェオの天才的なパスを待ち、それをゴールに蹴り込んだ。
しかし今ではどうだろう。世は技術の高いFWにあふれ、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドがセンターフォワードを務める時代だ。あるいはフィリッポ・インザーギとは、もはや前世紀の生き物なのかもしれない。
役割はゴールに押し込むことだけ。しかしそれにかけては、彼の右に出るものは未だに存在しない。モンドニコはこうも言った。
「ピッポがゴールを愛してるんじゃない。ゴ―ルこそがピッポに惚れ込んでいるんだ」と。
3度目のベルで彼は電話をとった。
「ちょうどランチが終わったとこだった。一日に2度もリハビリをやらなければならないから、普段より大変なんだ」
負傷中なのに時間を作ってくれてありがとうと言うと、フィリッポ・インザーギは大丈夫と言って、さあ何を聞きたいのと尋ねた。