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ウサイン・ボルト、世紀のよそ見。
北京五輪決勝レース秘蔵の連続写真。

posted2020/06/09 20:00

 
ウサイン・ボルト、世紀のよそ見。北京五輪決勝レース秘蔵の連続写真。<Number Web> photograph by Shinji Akagi

200mという20秒弱のレースで、ボルトは視線を上方へ送った。その視線の先にあったのは……。

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赤木真二

赤木真二Shinji Akagi

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Shinji Akagi

 2008年8月20日。北京オリンピック陸上男子200メートル決勝を世界記録(以下WR)で制した男。その男の名はウサイン・セント・レオ・ボルト。

 その記録「19秒30」は4日前の100メートル決勝で打ち立てた「9秒69」と共にWRであった。閏年の夏、22歳と365日。その実力を見せつけた男は、撮る者の疑念を晴らし、更なる驚きをもたらす存在となっていった。

 決勝は9割のフォトグラファーがゴールシーンを求める。誰が勝つか、注目はそこに集約される。100メートルであればその理屈も理解できる。しかし、200メートルのカービングには他のレースよりもスピード感があり、走者の力感は抜群。サイドから撮る選手のフォルムは「強い」。

 200メートルを「鳥の巣」(北京国家体育場)で撮影できたら、第4コーナーから直線にさし掛かる選手をサイドから撮りたい! と思っていた。

 但し、撮りたい被写体とカメラの間に、手前のレーンで先行する選手がフレームインしてくるリスクはある。それよりも前に「鳥の巣」で撮影できる可能性は未知数だった。

EURO2008の決勝で。

 時を遡ること7週間。6月29日、ウイーン。サッカーEURO2008決勝の舞台、エルンスト・ハッペルスタジアムのプレスセンターで横にいた旧知のカメラマン、ボブに声をかけられた。

「シンジ、北京オリンピックはどうするんだ?」私がパスを取得していないことを話すと彼は続けた。「クラブ(PSV)の夏の仕事が重なって全期間北京に行けないんだ。サッカーパス(EPS)なんだけど使ってもらってもいいよ! オランダと日本は同じ組だし」

 我々は握手をして、その晩の決勝のピッチサイドパスの交渉をしていたFIFA派遣のプレスオフィサー、ニコラスにオリンピックADの名義変更の件を尋ねた。

「FIFAがボブの会社に出してるパスだから、ボブが僕に変更届をメールしてくれたら、僕が北京の組織委に変更メールを書くよ!」という実に簡単な返答が戻ってきた。

 ボブは翌日メールを書いてくれて、ニコラスは夏休みを取る前に変更メールを組織委に送ってくれた。東京に戻ると北京からメールで添付ファイルが届いた。

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