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コロナ禍&五輪延期でどうなった?
卓球・水谷隼「まったく不安はない」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJMPA
posted2020/06/08 11:40
リオ五輪にて、シングルスで男女通じて日本人初のメダル(銅)獲得となった。
「これはあくまでも個人的な意見ですが……」
――5月下旬に全国で緊急事態宣言が解除され少しずつ日常が戻り始めています。ただし、第二波の懸念もある中で今後はコロナとの共生が1つポイントになります。競技を行なう上で今後どのような工夫が必要になるでしょうか。
「これから様々な競技で練習はもちろん、試合も再開されると思いますが、卓球では今年はダブルスの試合を行なわない、試合前後の握手を行なわないといった新しいガイドラインができたという話も耳にしています。
ただ、これはあくまでも個人的な意見ですが、特に海外では当面の間、試合を行なわなくてもいいのではと考えています。というのも、日本は緊急事態宣言が解除され、また、中国や韓国でもかなり状況が落ち着いてきていますが、世界を見渡せば、まだコロナが蔓延している国が多いからです。果たして、そういう状況下で試合をすべきかと考えたとき、選手やスタッフのリスクを考えると行なう必要はないと思うんですね。
また、日本の場合はすでにオリンピック代表選手も決まっていますし、そうした状況で出場することはベストではないと考えています。
卓球は室内競技で相手との距離も近く、練習中や試合中は風の影響を受けないよう窓を閉め、換気ができない、かなりの3密状態です。他の競技に比べればリスクも高い。そういった意味でも、命を最優先にして、コロナが落ち着いたタイミングでなければ競技を再開するべきではないと考えているんです。ただ、今後はコロナと共存していかなければいけないことも、自分を含め周りも理解しています」
「まったく不安はないですね」
――来年に延期された東京オリンピックですが、今後の状況によっては中止の可能性もあります。ベテラン選手として複雑な思いもあるのではないでしょうか。
「まったく不安はないですね。なくなったらなくなったで、それはしょうがないというか。一個人でどうにかできる問題でもないですから。
それに、今、現役でプレーしていますが、僕は首の皮一枚でつながっているというか、まさに毎日が必死という状態なんです。仮に東京オリンピックが中止になって、突然現役引退となっても、悲しいと感じるより、『やっと終わったか』と吹っ切れるような気がしますね。解放感の方が強いかもしれない」