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伊藤美誠と中国選手の本当の距離は?
松崎コーチが語る転機と金メダル。

posted2020/06/07 11:35

 
伊藤美誠と中国選手の本当の距離は?松崎コーチが語る転機と金メダル。<Number Web> photograph by ITTF

松崎太佑コーチと伊藤美誠。日本卓球界の悲願である中国超えへの期待が2人に寄せられている。

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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 今年7月に開催される予定だった東京五輪が来年7月に延期された。突然あらわれた1年間という時間については様々な捉え方があるだろうが、伊藤美誠を世界ランキング2位に押し上げた松崎太佑コーチ(崎は本来はつくりの上部が「立」)は、どう考えているのだろうか。

――東京五輪が1年延期になり、伊藤選手はポジティブにとらえているようですが、松崎コーチ自身はどう考えていますか。

「僕もプラスに考えています。1年後、美誠は間違いなく今よりも強くなっているので、楽しみですね。マイナス面でいえば大会がしばらくないこと。美誠はすごく試合が好きなので、モチベーションの維持が難しくなっています。今は、普段の練習から少し多めにゲーム練習をして、試合勘が落ちないように工夫しています」

――練習メニューは、松崎コーチが考えているのでしょうか。

「リオ五輪が終わってからは、100%美誠が練習メニューを決めたり、逆に僕が100%決めたりいろいろやっていましたが、今は50%ずつですね。1日、だいたい5時間ぐらいの練習時間の3時間は美誠が考え、残りの2時間を僕が考えた練習です。1人の考えで練習を決めてしまうと視野が狭くなるというか、気になったところばかりに偏ってしまうんですよ。今は、試合がないのでなかなか気付きづらいんですが、できるだけ勝つためという方向性からずれないようにやっています」

 2人の付き合いは伊藤が小学生の時からだが、中学の時に専属コーチになって、7年が経過する。その間、試行錯誤しながら伊藤に合った指導を見つけ、成長に繋げてきた。

――練習の内容は、リオ五輪前と変わりましたか。

「だいぶ、変わりましたね。リオ五輪までは極端に言うと、ゲーム力、頭のトレーニングが主だったんです。こういう展開になって、こうしたら相手の裏を突けるとか、そういうことですね。あとはもともとテクニックの高い選手なので、それを頭とミックスしてある程度勝つことができていたんです。でもリオ五輪が終わった後、しばらく勝てなくなったんですよ」

――リオ五輪で燃え尽き症候群のようになってしまった。

「それもあったと思いますし、周囲のレベルが上がり、頭だけのトーレ二ングでは勝てなくなったんです。しかもリオ五輪が終わって半年間は、1日2時間ぐらいしか練習をやっていなかった。僕は、『練習をしないと勝てなくなるよ』と言ったんですが、美誠がその気にならなくて、それがそのまま結果に出ていました。全日本選手権(2017年)で5回戦で負けて、さすがにこのままじゃまずいと気が付いてからは練習量が増えましたね」

【次ページ】 「待つことは美誠にとってすごく大事」

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