フランス・フットボール通信BACK NUMBER
八百長サッカー賭博はどんなもの?
ネットをフル活用する国際組織の実態。
text by
アントワーヌ・ブーロンAntoine Bourlon
photograph byDR
posted2020/06/07 20:00
史上最大の八百長組織を運営していたシンガポール人のダン・タン。2013年に逮捕され、5年の実刑を宣告された。
スポーツを使ったマネーロンダリングの方法。
「ドラッグで10万ユーロ稼いだと想像して欲しい」と、スポーツベットの研究エキスパートであるクリスチャン・カルブは説明する。
「その金をさほど注目度の高くないサイトで賭けに運用する。そこで密かに複数の異なる試合で本命に賭けることで、簡単に95%を回収することができる。それを元締めが利用している優良国の口座に振り込めばロンダリングが完了する。仕組みは極めてシンプルだ」
ヨーロッパではマルタやマン島、アジアなら香港、マカオ、シンガポールなどに本拠を置く注目度の低い元締めたちの中でも、シンガポールのダン・タン(55歳)は、歴史上もっとも名の知れた八百長のフィクサーである。
悪名高い《シンジケート》のボスであるタンは、長年にわたりヨーロッパやトルコ、アフリカで試合の工作とマネーロンダリングに携わり、2013~18年は獄中にあったのだった。
無秩序に世界中に広がったスポーツ賭博の闇。
スポーツは「組織犯罪を行うのに都合がいい」と語るのは、“ロトリテ・ドゥ・レギュラション・デ・ジュ・オン・リーニュ(Arjel/フランス政府の不正工作撲滅組織)”のコレンタン・セガレンである。
「サッカーの世界にはイタリアやロシア、アルバニアなど大組織のマフィアが存在する。彼らはリーグ下位のクラブをコントロールして試合を操作し、八百長試合に賭けた金を回収する。中国マフィアはポルトガルやスペインの試合にまで介入している」
2010年はじめ、ダン・タンが買収しようと画策したのはフィンランドの弱小チームであったタンペレ・ユナイテッドだった。
フランスの場合はどうか。幾つかのグループが非合法な投資活動を行ってはいるが、トップレベルの試合には関わってはいない。
「フランスではナシオナル(3~5部に相当)に賭けることはできないが、他の国はどこでもできる」とカルブは言う。
「中国ならばフランスの地域リーグの試合にも賭けられる。世界中でこれほど無秩序にスポーツ賭博が発達しなかったら、八百長試合の問題も起こらなかっただろう」