フランス・フットボール通信BACK NUMBER
八百長サッカー賭博はどんなもの?
ネットをフル活用する国際組織の実態。
text by
アントワーヌ・ブーロンAntoine Bourlon
photograph byDR
posted2020/06/07 20:00
史上最大の八百長組織を運営していたシンガポール人のダン・タン。2013年に逮捕され、5年の実刑を宣告された。
サッカーにおけるネット賭博の始め方。
さらには小規模な不正の問題がある。カルブが説明する。
「それにはふたつのやり方がある。最も古典的なのは、まず注目度の低い国でインターネットのサイトを開設する。そこでライセンスを取得したら、世界中に向けて賭けを募る。もうひとつは街の中でピラミッドシステムを作って賭けをするやり方だ。これもまた効果的だ」
金を集めるシステムを構築した後は、ピッチ周辺の仕事へとプロセスが進む。
「いくつか異なるタイプの不正がある」と、この世界の実態をよく知るある人物は語る。
「クラブの幹部や代理人はこう言って選手に介入できる。『君がXXに故意に負けてくれるといいが……。そうすれば私も君に給料を支払える』。また『1万ユーロ払うから負けてくれ』と露骨に袖の下を提案することもある。さらに酷いのは恐喝である。例えばヨーテボリ(スウェーデン)のGKはあるときこう囁かれた。『君の子供たちがどこの学校に通っているかわかっている。だから負けた方がいい』と」
八百長摘発は最優先事項ではないという現実。
サッカーであれ他のスポーツであれ、マフィアによる不正の多様化は留まるところを知らない。故意の無気力やドーピング、服毒、談合……。そしてサッカーにおいては、北アフリカから東ヨーロッパ、中国を中心としたアジアにまで世界的な広がりを見せている。コンピュータの画面を見ながら、当事者たちは次のような会話を交わす。
「中国リーグか……。ああ、この試合のレフリーはスロベニア人だ。セルビア人レフリーより買収が難しいぞ!」と。
取り締まりが難しいのは、権利の及ばない範囲の出来事に介入しなければならないからである。カルブは言う。
「多くの国にとって、この種の不正を暴くのは最優先事項ではない。そのための費用も馬鹿にならない。クロアチアで行われた会議では、ある人物がこう語っていた。『今は他に解決すべき問題がある』と。そう言いたい気持ちは私も理解できる。ドーピングと同様の難しさが八百長の問題にはある」
だが、この闘いに最も活発に関わっているインターポールにとっては看過できない問題である。捜査員の数を8人から80人に増やし、そのほとんどは西洋人である。
「しっかりと直面するためにはその仕組みを詳細に理解する必要がある」と語るのは、インターポールの組織犯罪ディレクターを務めるポール・スタンフィールドである。