フランス・フットボール通信BACK NUMBER
八百長サッカー賭博はどんなもの?
ネットをフル活用する国際組織の実態。
text by
アントワーヌ・ブーロンAntoine Bourlon
photograph byDR
posted2020/06/07 20:00
史上最大の八百長組織を運営していたシンガポール人のダン・タン。2013年に逮捕され、5年の実刑を宣告された。
UEFAも本格的な不正工作対策を始めた。
UEFAも問題の重要性を認識している。昨年10月にはアレクサンデル・チェフェリン会長は次のようなメッセージを発した。
「よりアグレッシブなやり方で闘いを進めねばならない。これまでのやり方では十分ではない。最も重要なのは各国政府と連携していくことだ。というのもわれわれの関心は、サッカーだけに範囲が限られていないからだ。
多くの情報や証拠を握っても、情報提供者がヨーロッパから1000kmも離れていては、犯罪者を刑務所に送り込むことはできない。とてもわれわれだけで解決できる問題ではない」
そしてUEFAは、《ヨーロッパサッカーにおける試合の不正工作》に対する闘いの調査を実施することを宣言した。スタートとしては悪くはないのだろう。
ジャーナリストのデクラン・ヒルへのインタビュー。
デクラン・ヒルはジャーナリストであると同時に、スポーツにおける八百長と試合工作に関する世界的なエキスパートでもある。
マフィアとサッカーの関係を描いた彼の著作『ザ・フィックス:組織犯罪とサッカー』は15カ国語に翻訳されている。
――八百長試合という現象を引き起こす最大の要因は何でしょうか?
「シーズン終盤になると、あまりに多くの試合が何の価値も見いだせない中立的なものになってしまう。誰も勝ち負けにこだわらないから、不正が介入する余地が生まれる」
――この害悪を駆除することは可能でしょうか?
「私は出来ると信じている。変えていくことは可能だ。簡単だと言ってもいい。そう望めばいいだけなのだから。例えばリーグや大会のやり方を変える。シーズンの3分の2はプレーオフ・ステージにする。そうすればすべての八百長試合は排除される」
――不正を摘発された際の罰則が軽すぎるというのはありませんか?
「そう思う。ダン・タンは最悪のケースだった。彼の事件は、この世界を象徴する出来事だった。
彼にはふたつの国際逮捕状が出された。目的はダン・タンをヨーロッパに送還し、その人脈のすべてを明らかにすることだった。彼が証言をすれば、系列を遡ることができたし、すべての秘密が明らかになるハズだった。大々的なスキャンダルにはなったろうが、サッカー界を浄化するいい機会でもあった。
だが、インターポールは徹底的な捜査をせず、シンガポール政府はダン・タンの引き渡しを拒否した。彼は5年の実刑に服したが、それ以外は何の罰金も懲罰も負わなかった。だから沈黙の掟が働いた。
最悪だったのは、最後まで突き詰めなかったばっかりに、彼のコネクションの全容を明らかにできなかったことだ。(逮捕から)20分後には代役が立てられた。あれは彼ひとりの犯罪ではない。組織は存在し続けるし、彼の代役はいくらでもいる」