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祝、2カ月ぶりブンデスリーガ再開!
ではドイツの街は今どうなってる?
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2020/05/17 13:30
ドイツの街なかにあるスポーツバーの風景。お酒を飲み交わしながら“3密”で観戦することは、まだできない……。
感染の第2波は「確実に来る」。
もちろんクリーニング屋のおばちゃんが自然と明るかったように、デュッセルドルフに住む人たちも、マスクをしなければならない“新しい日常”に慣れてきている。
国内の新規感染者数が1000人を超えていた1週間前に比べると、ここ数日は3桁に減ってきていることもあるだろう。
医療現場の最前線ではウイルスとの戦いが続いているはずだが、銃後の人々は平時の感覚を取り戻しつつある。
要するに、「緩んできた」ということだ。
しかし、新規感染者の数を抑え込んできたとは言え、新型コロナウイルスを根絶できたわけではない。一見すると落ち着きを取り戻した目の前の日常は、政府主導のロックダウンが功を奏し、一時的に取り戻した“偽りの平和”に過ぎないのではないか。そして人々は、自分たちがその錯覚に陥っていることに、薄々は気づいている。
ドイツの実効再生産数は、1を超えたり超えなかったりと、不安定な状態が続いている。政府の公衆衛生研究機関であるロベルト・コッホ研究所のロイター・ワイラー所長によれば、感染の第2波は「確実に来る」のだという。
まだ大声でブンデス再開を喜べない雰囲気が。
このような“偽りの平和”の中で、ブンデスリーガは再開されたわけだが、5月16日、市井の人々の関心はそこまでフットボールに向いていないようだ。
クリーニング屋のおばちゃんのようにそもそもブンデスリーガに興味がない層は別として、例えば他人と1.5mの距離を取る必要があるスーパーの店内で、マスクを着けて買い物をする人々や、ロックダウンの最中から品出しに精を出す店員に、ブンデスリーガの再開について質問をするのは、まだ場違いな感じがしてしまうのだ。
もちろん元々のサッカーファンのように、再開を待ち望んでいた人々はいる。
スーパーを出て少し先に進むと、新型コロナ禍の前はブンデスリーガやチャンピオンズリーグを店内の大型テレビで放映していた人気のレストランがある。
前日の夜、ウェイターのオヤジに「明日、ここでブンデスリーガを観ることはできるかい?」と聞いてみたところ、「明日は予約で一杯だから! お前は入ることができないぜ(笑)」と、にべもない答えが返ってきた。だが、「予約で一杯」ということは、それだけリーグの再開を待ち望んでいるファンがたくさんいるということなのだろうと、少し嬉しく思った。