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祝、2カ月ぶりブンデスリーガ再開!
ではドイツの街は今どうなってる?
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2020/05/17 13:30
ドイツの街なかにあるスポーツバーの風景。お酒を飲み交わしながら“3密”で観戦することは、まだできない……。
テーブルに離れて座り、ジッと試合を眺める客。
そして翌日、そのレストランに向かってみたわけだ。外からチラッと店内を覗くと、各テーブルに1人か2人座って、キックオフ前のテレビ画面に見入っていた。「予約で一杯」という言葉からイメージしていた人数には程遠かったが、こうやってテーブルに離れて座って観戦する風景も“新しい日常”の姿の1つなのだ。
さらに通りを進んだところにある小さいバーでは、10人くらいの客が、始まったばかりのフォルトゥナ・デュッセルドルフ対SCパーダーボルンの試合に食いついている。
実際の数は分からないが、いつもであればスタジアムでフォルトゥナの選手たちが蹴るボールの行方を追う何万もの人々が、自宅のテレビで巣ごもり観戦しているはずだ。
しかし、こうしたそもそもの熱狂的なファンを除けば、やはり一般的な人々の関心はフットボールにまだ向いていないようである。
ブンデス再開よりもレストランでの外食の喜びに。
マスク着用を義務付けられた乗客たちがぞろぞろと歩く、暗い雰囲気を醸し出す地下鉄に揺られ、繁華街のある旧市街まで出かけてみることにした。
ライン川がすぐ傍を流れる以前は賑やかだったレストラン街に足を向けてみると……人が溢れていた!
まるで新型コロナ禍の前のような光景だ。
まばゆい初夏の西日を浴びながら、家族と、友人と、恋人と……ビールを片手に、テラス席で人々は思い思いの時間を過ごしている。いつもの食事時の時間ではないにもかかわらず、だ。
ブンデスリーガが再開した5月16日。それは、スペインやイタリア程ではないにせよ、タフなロックダウンを経験したデュッセルドルフの人たちにとって、テイクアウトだけではない飲食業の再開が認められて初めて迎える週末でもあったのだ。
こうした生気を取り戻しつつある旧市街のいくつかのレストランを覗くと、店内の幾つかのテレビ画面では、再開したブンデスリーガの試合が流されていた。
画面の中の無観客試合を観ている客もいるが、数は少ない。店の奥には大型スクリーンが設置されているが、その前には誰も座っていない。そもそも店の中にいる客の数は、ウェイターにコントロールされているところもあるようだが、まばらなのだ。
新型コロナウイルスとの長く辛い戦いを続けてきて、ひとまず最初の関門をくぐり抜けたこの日。レストランの客は、室内のサッカーが映るテレビ近くの席よりも、外のテラス席での飲食に開放感を味わっているようだった。
今はまだ、テレビ画面の向こうのサーカスよりも、目の前のパン、といったところだろうか。