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小林大悟が語る米サッカーと代表。
「キングカズが目指してるんだから」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2020/04/30 20:30
アメリカでのプレーもすでに8年目、小林大悟の上昇志向は衰えることを知らない。
「サッカーが好き」と言ってはダメ?
――メンタルの話に戻ると、アメリカ8年、海外合計10年を過ごす中で、中学生時代のように電車で吐くようなことはなくなりましたか? 初対面の選手がいてもうまくやれているのですよね?
「そうですね。まあ、最終的にはサッカーが好きっていう一番の土台が傷つけられなければ多少のことは大丈夫になっています。あ、でもこの表現はまずいな(笑)。高校生の頃から“サッカーが好き”とかバカみたいだから言うなって教えられているんですよ。”サッカーを通した社会貢献をしたい”とか、頭を使って話せって言われてるのに(笑)」
――でも、とてもストレートで伝わると思いますが。
「そうですかね。でも真面目な話、社会貢献でいうと、コロナ禍であらためて思うのは僕たちのようなスポーツやエンターテイメントって、健康や生活の充実の上にしか成り立たないかもしれないということ。
でも、プレーができなくったって、このインタビューという発信が誰かに伝わったり救ったりしてるかもしれないなって思うんです。読んで、あーくだらねーって思う人もいるかもしれないけど何かしら感情を動かしてるんじゃないかなと」
「代表なんて目指してなきゃおかしい」
――スポーツ選手の発信にはそういう力があると、私も信じています。それにしても、37歳の今ももっと上のレベルでやりたいという気持ちが強いからこそ続けられるものなんだなとあらためて思いました。
「そうなんですよね、それが。できるだけ上でやりたいんです」
――代表も、目指してるのでは?
「代表なんて、キングカズが目指してるんだから、俺ら下のもんがみんな目指してなきゃおかしいと思いますよ。でもね、『いまも代表目指してます』って言うと『セカンドキャリアの準備したほうがいいんじゃない?』とか、『ただ言ってるだけ』みたいなパフォーマンスに受け取る人もいるんですけどね。でも結局、サッカー選手ってみんなずっと少年みたいだなって思います」
確かな技術はさることながら、大らかな心と、シンプルなサッカー愛、そして尽きない向上心。今やアメリカサッカーを一番知る男になった小林との話からはそんなワードが浮かんだ。それらはもしかしたら、サッカーにもスポーツにも限らない。海外で暮らしてみようと思う人に共通して必要なスタンスなのかもしれない。