酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
投打で球宴出場、軽妙洒脱な解説。
関根潤三の近鉄愛と江戸っ子ぶり。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/04/11 09:00
半世紀以上前の成績とはいえ、規定投球回数と規定打撃を6回ずつクリア。関根潤三はNPB史に残る選手なのだ。
「名調子タイプ」の解説者として。
筆者は解説者の本も書いている。解説者の中には「なるほど」と思わせる技術論を展開するタイプや、精神論をひけらかしタイプなどがあるが、関根はどちらでもなかった。端的に言えば「名調子タイプ」だった。
例えばこういう調子である。
アナ「インコーナーにずばっと速球が食い込みました」
関根「うわっ、いい球!」
アナ「○○投手、立ち上がりから三者連続三振です」
関根「飛ばし過ぎですね、今日はどうなってんの」
アナ「鋭いライナーが左中間を切り裂きました」
関根「振れてるね、いいことあったんじゃない?」
漫才の掛け合いのようでその間が実によかった。ただ、お天気屋だったようで、虫の居所が悪いと……。
アナ「○○投手はどうですか」
関根「ダメですね。使い物にならない。せっかく監督が抜擢したのに、こんなんじゃやってられませんね」
アナ「代打○○選手、簡単に三振しました」
関根「あんな振り方してちゃ、どんなボールだって当たりませんよ。ダメですね」
若いアナウンサーには容赦なく。
また、若いアナウンサーにも容赦なかったという。
のちには名コンビになったが、ニッポン放送の深澤弘アナウンサーは、若いころは関根と組むとドキドキしたという。
深澤「ランナーは一塁に柴田、バッターボックスは土井。ここはエンドランの役者がそろいました」
関根「ここでエンドランをやるバカはいないでしょう」
知識不足を痛感した深澤アナは関根に頼み込んで、関根の恩師・藤田省三に野球を教えてもらったそうだ。