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ラグビー界の英雄オドリスコル。
長嶋茂雄のような華と残した言葉。 

text by

竹鼻智

竹鼻智Satoshi Takehana

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photograph byAP/AFLO

posted2020/04/10 11:40

ラグビー界の英雄オドリスコル。長嶋茂雄のような華と残した言葉。<Number Web> photograph by AP/AFLO

アイルランドラグビー界の英雄ブライアン・オドリスコル。178cmと小柄ながらも神がかり的なプレーを連発し、多くのファンの心を掴んできた。

記者会見で残した伝説の名言。

 シックスネーションズ2009年大会では、強烈なライバル関係にあるイングランドとの対戦前の記者会見で、伝説となる名言を残している。

 この大会のイングランド代表監督マーティン・ジョンソンとは、2001年のライオンズ遠征でチームメイトとして戦った。この遠征でジョンソンとプレーしたときの感想について聞かれたオドリスコルの答えは、欧州中のラグビーファンたちの記憶に残るものとなった。

「知識とは、トマトが果物だと知ること。知恵とは、それをフルーツサラダに入れないことだ」

 皮肉たっぷりなこの答えに会見場は笑いに包まれ、この“名言”は試合のビルドアップとして、両国メディアに大きく取り上げられた。イングランドをホームのクローク・パークに迎えて行われたこの試合、オドリスコルは1トライ、1ドロップゴールも決める活躍を見せ、14-13の接戦を制しての勝利に大きく貢献。そしてこの年の大会では、アイルランドはグランドスラム(全勝優勝)の座に輝いている。

唯一、届かなかったW杯優勝。

 こうして、世界中のラグビー界の記録と記憶に残る活躍を見せてきたオドリスコルだが、唯一栄光の座に近づくことすらできなかった大会がワールドカップだ。

 1999年ウェールズ大会から2011年ニュージランド大会までの4大会で、17試合に出場して7トライを挙げたが、アイルランドは2大会で準々決勝進出止まり。1999年は準決勝プレーオフ(各予選プール2位と、最も勝ち点の高い3位チームによって準々決勝進出の座を賭けて争われる。2003年大会以降は廃止された)で、2007年フランス大会に至っては、予選プール敗退という屈辱に終わっている。

 稀代の名選手は、その人間性からプレーする全てのチームでキャプテンを務めてきた、真の英雄だ。世界の英雄たちの夢の舞台、ワールドカップで栄光の仲間入りを果たすことができなかったのは、自らの皮肉の呪いであろうか。

 こうした皮肉は抜きにして、私のナンバーワンは、ブライアン・オドリスコル。ラグビー史上最高のアウトサイドCTBの1人として名を挙げても、異論を唱える者は少ないだろう。

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