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ラグビー界の英雄オドリスコル。
長嶋茂雄のような華と残した言葉。
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byAP/AFLO
posted2020/04/10 11:40
アイルランドラグビー界の英雄ブライアン・オドリスコル。178cmと小柄ながらも神がかり的なプレーを連発し、多くのファンの心を掴んできた。
「In BOD We Trust」
現役時代、クラブ、代表共に、シーズンや大会の鍵となる大勝負で、攻守共に素晴らしいプレーを見せてきたオドリスコル。その神がかり的な活躍ぶりから、In God We Trust (「我々は神を信じる」というアメリカ合衆国の標語で、現在の米ドル紙幣にも表記されている)を文字って『In BOD We Trust』というタイトルがスポーツメディアのヘッドラインを飾った。※BOD=Brian O’Driscoll
サポーター達はこの標語がプリントされたTシャツを着てアイルランド代表を応援し、2009年にはこれを題名にした評伝も出版されている。
国じゅうが沸いたハットトリック。
年代別代表でも存分に実力を見せてきたが、フル代表としてその存在をライバル国に強烈に知らしめたのは、シックスネーションズ2000年大会。フランス戦でのハットトリックも含め、大会デビューシーズンで5トライを挙げる大活躍を見せた。1972年以来となるアウェーでのフランス戦勝利の立役者となり、鳴り物入りでフル代表デビューを果たした若手の活躍に、アイルランドじゅうのファンが大きく沸いた。
この大会での活躍が認められ、翌2001年ブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズにも選抜され、オーストラリア遠征に参加。この年、トライネーションズ(現在のザ・ラグビーチャンピオンシップの前身で、アルゼンチンが加わる前のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの代表チームで争われる大会)でオドリスコルは3戦ともスタメン出場を果たしたが、優勝した絶頂期のオーストラリアを前に3連敗を喫した。
しかしながら、第1戦で見せた、ハーフウェーライン付近でボールを受け取り、ディフェンスを次々と抜き去って挙げた個人技のトライは、世界中のラグビーファンを震撼させた。北半球では既に名が知られていた当時22歳の若者は、南半球にもその実力を堂々と見せつけた。