猛牛のささやきBACK NUMBER
22歳でホームラン王から10年……。
T-岡田が取り戻した“遊び心”。
posted2020/04/06 12:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
昨年はわずか20試合の出場に終わり、今年は復活をかけたシーズンである。
新加入のアデルリン・ロドリゲス、昨季途中に中日から加入したスティーブン・モヤの外国人2人と、一塁のポジションを争う。
22歳で本塁打王を獲得してからはや10年。
これらの言葉を並べると、T-岡田の置かれている立場は厳しい。しかし今年のT-岡田には、悲壮感は漂わない。
オープン戦は12試合に出場し.296の打率を残し、3本塁打はチーム最多だ。今年は楽にバットを振れている印象がある。
それは“遊び心”のせいかもしれない。昨オフ、プエルトリコで行われたウィンターリーグに参戦し、そこから持ち帰った収穫だ。
プエルトリコで見た“楽しむ”姿勢。
昨年10月、T-岡田は23歳の鈴木優、漆原大晟とともにプエルトリコに渡り、約2カ月間過ごした。
「向こうはちょっと大雑把で、日本のほうが細かいことをしっかりやるので、野球自体のレベルとしては日本のほうが高いとは思うんですけど、すごく学ぶことや感じるものが多くありました」とT-岡田は言う。
衝撃だったのは、向こうで出会った選手たちの“楽しむ”姿だった。
「みんな野球をすごく楽しんでいましたし、スイッチの入れ方がうまいんですよね。今の今までふざけていたというか、笑っていたやつが、バッティング練習のケージに入ると、途端にガラッと雰囲気が変わる。そういうことをさらっとできる。やっぱりずっとスイッチを入れっぱなしだと、人間、なかなか集中力が持たないと思うんですけど、向こうの選手はオンオフの切り替えが本当にうまいと感じました」
試合前には、5分間ほど選手が輪になり、グラブでボールをポンポンと弾き合って遊んでいた。わざと他の選手が取りにくいところに飛ばし、相手はそれになんとかグラブを当てる、という遊びだが、「そういうのが意外と、守備のグラブさばきにつながっていたりする」とT-岡田は言う。
「ふざけるわけじゃないですけど、楽しさがないと、行き詰まってしまう。日本はそういう選手が多いと思う。真面目にやりすぎない、って言い方はちょっと悪いかもしれないですけど、練習の中にも遊びは大事だなと感じて、日本に帰ってきてからも、そういう遊びを探すというか、遊び心を持ちながらやろうとしています」