ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
降格危機にサポーターは辛辣な罵声。
大迫勇也とブレーメンの正念場。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/04/06 11:40
リーグ再開は“早くて5月から無観客試合”という案もある。それが実現した際、ブレーメンと大迫勇也は力を発揮できるか。
牧歌的で柔和で温かな街のクラブが。
昨年の12月、ブレーメンのホームゲームの取材を終えて帰路につく途中で市内中心部のレストランに立ち寄ったときのことを、よく覚えています。
当時は新型コロナウイルスが流行する気配もなく、街中にはクリスマスマーケットの屋台が建ち並び、市民や各地から訪れた観光客は大いに盛り上がっていました。
そんななかで僕もクリスマスマーケット名物のホットワインを飲もうかなと佇んでいると、数10m先のレストランで中年の男性がにこやかに笑いながら僕に手を振っています。何事かと思って近寄ると、彼が言いました。
「ワインもいいけど、この街はビールも上手いよ。ベックス(Beck's)ってピルスナーを知っているかい? えっ、日本でも有名だって? そりゃあ、嬉しいなぁ。だったらぜひ、一杯飲んでいってよ。ここはベックスの醸造所が卸している直営店なんだからさ」
あの有名なブレーメンの音楽隊の像がある、ブレーメン・マルクト広場の脇のベックスの直営店で美味しいビールに舌鼓を打ちながら、この牧歌的で柔和で温かな街のクラブが苦境から脱する未来の姿を思い浮かべました。
現在、その直営店も休業を余儀なくされているでしょう。苦難の先にある未来、それが明るく眩いものであることを願い、僕も外出制限が実施されるドイツの自宅でひとりビールを嗜み、必ず訪れるはずの「サッカーのある日常」に思いを馳せています。