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100キロ級で「柔道3冠」を目指す。
ウルフ・アロン、1年延期のメリット。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKYODO
posted2020/04/03 07:00
2017年の世界選手権に続き、昨年、平成最後の全日本選手権を制したウルフ・アロン。「柔道3冠」に向け、残すは五輪のみだ。
1年の延期がプラスに作用する部分とは?
その後、東京五輪が1年延期になったことで4年に一度の中の1日は、5年に一度の中の1日になる。
五輪史上前例のない、延期という事態を乗り越えた先に手にする金メダルの価値は計り知れない。
1年の延期が確実にプラスに作用する部分もある。コンディション面だ。
ウルフには両膝の手術歴がある。'17年の世界選手権金メダルを獲得してから4カ月後の'18年1月、稽古中に左膝半月板を負傷し、手術。そして、昨年12月には右膝を手術した。
今年2月には一時、乱取りをやるまでに回復したが、多少の焦りもあったのか、ついついオーバーワークになっていたという。
「一度良くなって追い込みすぎた」
2月27日の時点でウルフは「稽古をやり過ぎて水がたまってしまった時期もあった。一度良くなって追い込みすぎた。体と相談しながらやっていかないと一流としてだめだと痛感した」と語っていた。
焦る気持ちが出たのは当初の予定であった今年7月に照準を合わせていたからだろう。手術から7カ月というのは決して十分ではない。
「組手も、足技も、やりたいことは数え切れない。すべての技、技術、スタミナも伸ばせるところがある」と言っていただけに、1年の延期で強化に当てられる時間が増えたことは好材料だ。
ウルフが頭角を現し始めたのは、ロンドン五輪で男子柔道が史上初の金メダルゼロに終わり、日本柔道界全体がどん底からの巻き返しを図っていた15年秋だった。
当時は東海大の2年生。'15年11月の講道館杯全日本体重別選手権兼リオデジャネイロ五輪代表一次選考会で、見事に初優勝し、シニア初タイトルを手にした。