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100キロ級で「柔道3冠」を目指す。
ウルフ・アロン、1年延期のメリット。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKYODO
posted2020/04/03 07:00
2017年の世界選手権に続き、昨年、平成最後の全日本選手権を制したウルフ・アロン。「柔道3冠」に向け、残すは五輪のみだ。
100キロ級の選手の3冠は井上康生が最後。
ウルフは世界選手権初出場だった'17年に金メダルを獲得。その後、体重無差別で争う難関の全日本選手権を'19年に制した。100キロ級の選手が全日本で勝ったのは'13年の穴井隆将以来6年ぶりだった。
残すところはあと1つ。「3冠を獲って歴史に名を残したい」との意気込みは強く、8人目の快挙を実現する舞台として東京五輪を熱い視線で見つめている。
100キロ級の選手が3冠を手にすることには格別の価値がある。
超級以外の選手で3冠を達成したのは、過去に2人。
身長171センチで80キロ級ながら全日本を2度制した伝説的存在の岡野と、ウルフの師であり、現在の男子監督を務める井上の2人しかいない。
100キロ級の五輪王者が、'00年シドニー五輪の井上を最後に誕生していないことも、ウルフの意欲をかき立てる。
「4年に1回しかないというところが一番大きい」
2月27日の東京五輪代表内定会見では、このように語っている。
「最後に100キロ級で金メダルを獲ったのは'00年の井上先生だから、(優勝したら)20年ぶりになると思う。この東京の地で勝って、100キロ級が花形である時代を、僕が取り返していきたいです」
内定会見では世界選手権と五輪の違いを尋ねられ、このように表現した。
「4年に1回しかないというところが一番大きいと思います。
選手によっては“世界選手権のほうが多くの選手が出るから、勝つのが難しい”という人もいますが、五輪では4年間に一度の中の1日にピークをもって来られる選手が勝つ。
それだけ価値のあるものだと思います」