“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「あれが浅野拓磨の弟?」という目。
それでも兄は僕にとってヒーロー。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKaito Asano
posted2020/03/30 18:00
海外で所属先を模索中だという浅野快斗(右)。現在は、兄・拓磨がいるセルビアに滞在している。
「兄たちの前でプレーできて嬉しい」
2回戦の松本国際戦でも2-1で迎えた67分に田口に代わって投入され、2試合連続でスーパーサブ的な役割を果たした。3回戦の日章学園戦では1-2で迎えた51分に投入されると、チームは3-3の激戦を繰り広げ、PK戦での勝利。6年ぶりのベスト8進出に貢献した。
迎えた準々決勝・矢板中央戦。スタンドには初戦以来となる拓磨と雄也の姿があった。快斗は2点リードを許した後半頭から投入されると、何度もスプリントでゴールに迫るが、矢板中央の鉄壁の守備の前にシュートを1本も打てずに、0-2の敗戦を喫した。
「周りからは浅野拓磨、浅野雄也の弟と言われ、ようやく自分が主役になれる舞台、小さい頃から憧れて、拓磨が起用されたポスターで見ていた場所に立つことができた。スタメンで出られなかったのは悔しいけど、兄たちの前で自分のプレーを見せることができたことが本当に嬉しい。
正直、ここまで来るのに本当に長かったし、本当に辛かった……。これからもやっぱりこれを味わいたいし、自分の力で輝きたい。やっぱり僕はサッカーをこれからも本気で続けていきたいと心から思いました」
海外でのチャレンジを模索中。
浅野快斗は今、覚悟を持って新たなステージを模索している。残念ながら一番求めていたJリーグからのオファーはなかった。でもプロサッカー選手になることへの覚悟は変わらず、大学進学という道は選択肢になかった。
「サッカーで生活するのが夢なので、就職してサッカーを続けるか、海外にチャレンジするかの2択でした。雄也が大学からプロになる道も示してくれたのですが、僕はどちらかというと、性格的に雄也よりも拓磨に似ていると思うところがある。だからこそ、拓磨が示してくれた道を進みたいと思ったんです。拓磨は僕らが下にいたからこそ、経済面でも『高卒でプロに行くしかない』という覚悟でチャレンジした。それは本当に心から感謝をしていますし、生き様が本当にかっこよかった。僕は拓磨のように全力でチャレンジしたいと思った」
最初は就職に気持ちが動いていた。だが、それを引き止めてくれたのは拓磨だった。
「お金は俺が出すから、チャレンジする意思があるならチャレンジしたほうがいい」
その言葉が、快斗の背中を押してくれた。