ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
ドラフト9位→主将、ポスト筒香に。
DeNA佐野恵太「ピンチで仕事を」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byAsami Enomoto
posted2020/03/29 11:30
1994年11月28日、岡山県生まれ。広陵高、明治大を経てドラフト9位でDeNA入団。
真剣さが伝わる佐野の言葉。
佐野は明るくポジティブな人間だ。声出しのときはユーモアを交えチームメイトの爆笑を誘い、巧みなステップからなるコミカルな“佐野ダンス”はファンの間ではすっかり有名だ。ただ、記者からインタビューを受けるときの佐野は、いたってシリアスである。ほとんど笑うことなく、言葉を選び真摯に答えてくれる。それはルーキー時代から変わることはなく、野球に対する真剣さがひしと伝わってくる。
だからこそキャプテンと4番という立場は重荷なのではないだろうか。どこかでパンクしてしまうのではないかと心配になってくる。
「いやパンクしないように手加減してやれるほど余裕はないですし、手を抜けるほど自分をコントロールしてきた経験があるわけじゃないですからね。だからまずは思い切って100パーセントでやるしかない。それでもしパンクしてしまったら、そこまでの器だし、そのときは誰かが助けてくれるのかなって」
新主将の力が試される2020年。
最後ぽつりと「助けてくれる」と佐野は言ったが、それは自身の弱さを吐露したわけではなく、チームメイトへの強い信頼が感じられた。ベテランから若手まで今のDeNAには、昨シーズン優勝争いを経験した成熟したメンバーが揃っている。25歳の新キャプテンに対し誰もが「自分らしくやってほしい」と考えているはずだ。
「自分の役割は、勝っているときよりも負けが込んできたとき、チームが苦しくなったとき先頭を切っていいムードに戻すことだと思っているんです。ピンチのときこそ、自分が一番仕事をしなくちゃいけない」
現在、新型コロナウイルスの感染拡大により、シーズン開幕が不透明な状態になっている。例年とは異なる慣れぬ状況での調整となり、選手たちは苦労を強いられている。まさにシーズン開幕前に訪れたピンチ。早くも佐野の力が試されるタイミングだと言ってもいい。
22年ぶりのリーグ優勝と日本一を目指すベイスターズは、いいスタートを切ることができるのか。新キャプテンの度量と行動力に期待したい。