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ドラフト9位→主将、ポスト筒香に。
DeNA佐野恵太「ピンチで仕事を」
posted2020/03/29 11:30
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Asami Enomoto
「予定の人数を超えてしまうけども、もうひとりいいか?」
2016年10月20日、グランドプリンスホテル新高輪で行われた第52回ドラフト会議。横浜DeNAベイスターズのゼネラルマネージャーだった高田繁は、テーブルを見回しそう語りかけた。濱口遥大を筆頭に予定していた8名の選手の指名を終えるところだった。
同じテーブルを囲んでいた球団代表に就任したばかりの三原一晃は、高田GMの一言に次のように答えたという。
「後悔するのは嫌ですから獲りましょう」
こうして明治大学の佐野恵太は、ドラフト9位でDeNAに指名された。支配下登録選手として全体で87人中84番目、セ・リーグでは最後の指名だった。
三原代表は振り返る。
「かなり悩んだ選手だったので高田前GMの言葉がなかったら、獲得していなかったかもしれません。今思えば、本当に獲って良かった。一番喜んでいるのは、担当スカウトだと思いますよ」
代打育成、高田前GMの狙い。
4年目の今シーズン、佐野はDeNAの新キャプテンに選ばれ、一気に注目を浴びることになった。
広陵高校出身の佐野は明治大へ進むと、リーグ戦で63試合に出場。4番に座ることもあり通算6本塁打、33打点を挙げている。ドラフトの順位が物語るように、成績だけ見れば中庸な選手だった。
高田前GMの狙いは次世代の代打育成である。当時のDeNAの代打といえばベテランの後藤武敏と下園辰哉が務めており、彼らにつづく存在が育っていなかった。主にファーストを守っていた佐野だったが、打撃に光るものがあり獲得に至ったという。