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香川真司がレアルと戦った日。
2部にいても、頂点への志は折れず。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2020/03/29 11:50
香川真司とサラゴサは、マドリーに完膚なきまでに敗れた。しかし、トップオブトップとの戦いに胸は躍っていた。
厳しい1年になることはわかっていた。
厳しい1年になることは予測していた。それは1部で強い相手と対戦したり、ポジション争いするのとはまた違う厳しさだ。
「2部にいるわけだし、この1年は苦しむってわかってたし、周りからも厳しい目で見られるのもわかってた。でも、それに戸惑ってた部分もあるのは自覚してる。周囲の目に自分が惑わされてたのもある」
2018-19シーズンはドルトムントでもベシクタシュでも十分な出場時間がなかったので、ピッチに立つことすらそう簡単ではないとわかっていた。それでも予想以上に苦しんだ。加えて前半戦は古傷の痛みが治まらなかったという。ようやく痛みなくトレーニングに取り組むことができたのは年が明けてからだ。
「W杯前に足首を怪我したのが慢性化してて、グロイン(鼠径部)にもきたし、バランスを崩して逆に来てって悪循環してた。それが今季前半でケアできて原因もわかって、痛みのない状況で練習できて試合できるのは本当に久々だった」
レアル戦ではシュート4本と印象的なスルーパスが2本。香川ここにありという存在感を見せつけた。あらためて映像を見ても、サラゴサの攻撃の多くに香川が絡んでいる。
それでも、試合後のミックスゾーンに来なかった理由はあるのか。それともちょっとした気まぐれか。
「僕の中では本当に悔しかったんですよ。喋れる状況じゃなかった。安易に答えたくなかったんですよね」
冗談を交えたトーン、ではなかった。
彼らは戦いの準備を止めない。
1月29日のレアル戦、後香川は再び負傷と復帰を繰り返している。スペインメディアからも厳しい目で見られている。一方でチームは昇格へ向けて順調で、香川がどう絡み、再び存在感を発揮して行くか、という時期に中断に入った。
いつリーグ戦が再開されるのかもわからないし、欧州選手権は延期、2022年のカタールW杯にだってどのような影響が出るのかもわからない。それでも彼らは、いつかくるその日のためにトレーニングをやめないだろう。私もいつかくる再開の日を、彼らの活躍を思いっきり喜べるように、日々健やかに過ごすこととしたい。