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香川真司がレアルと戦った日。
2部にいても、頂点への志は折れず。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2020/03/29 11:50
香川真司とサラゴサは、マドリーに完膚なきまでに敗れた。しかし、トップオブトップとの戦いに胸は躍っていた。
ミックスに現れなかったので、翌日に……。
だがレアル戦では、“違い”を見せつけた格好になった。だからこの日は結果に悔しさはあっても自身への手応えは得ているだろうし、敗戦後もミックスゾーンにやってきて話をするだろう、と思っていた。
しかし結局、香川は最後まで姿を現さなかった。もちろん、選手だって話したくない日はある。しかしどうにもすっきりせず、翌日練習場を訪れることにした。
サラゴサの練習は、冒頭15分間のみ公開。お茶などしながら、ひたすら待つことおよそ2時間。香川はようやく現れた。
「レアル戦だからってドイツから来たの?」
軽く先制パンチを食らう。確かにスペイン2部の試合は、開幕直後の数試合しか取材していない。
「こっち暑いでしょ? 15度くらいあるから。ドイツは?」
そう陽気に話す香川は半袖で、こちらはダウンジャケットを着込んでいた。
前日の試合について、レアルとの試合について聞くことにする。
「今のチーム状況、個人的な立ち位置を考えたら、満足できないですよね。感覚は良かったですけど」
「メンバーみていたら俺しかいなかった」
リーグ戦での優勝争いと1部昇格を目指すサラゴサにとって、カップ戦に全てを注ぎ込む余裕はない。いくら相手がレアルだとはいえ、照準を合わせるべきは週末であり、ミッドウィークではなかった。
だからこそ、香川にチャンスが回って来たのが現実だ。でもそんな事情はどんなプレーを見せるかとは関係ない。トップ下で出場した香川は、トラップで相手を交わすなど余裕のある”らしい”プレーを随所で見せた。
「実はレアルに悪いイメージはなくて。けっこうやらせてくれるんですよ。スペースがあるし」
ドルトムント時代に対戦経験のある香川が、周囲と出来がちがったのは当然かもしれない。レアルは格下の相手と戦う時は、無理をせずゆったりと相手にボールを持たせるが、いざゴール前にたどり着くとそこから先は途端に厳しくなる。 それを香川は最初からわかっていた。
「あれが(対面する選手が)カゼミーロだったらもっと厳しかったかもわからなかったけど、けっこう、ある程度はやらせてくれたんですよね。最後3分の1くらいからきゅっと閉まるんだけど」
それでもトップ下の香川はチャンスがあると思っていた。
「1、2本は絶対チャンスあると思っていた。でもきのうの(サラゴサの)メンバーみていたら俺しかいなかった。絶対チャンスはあるなと。狙ってはいたんだけど」