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周東佑京ら輩出の東農大オホーツク。
好選手を育む氷点下20度の“虎の穴”。 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2020/03/26 20:00

周東佑京ら輩出の東農大オホーツク。好選手を育む氷点下20度の“虎の穴”。<Number Web> photograph by Yu Takagi

ブランドン大河ら今季もプロ注目の好選手が揃う東農大北海道オホーツク。写真は新4年生のみ、2019年12月取材時のもの。

後を継ぐ三垣監督、昨春も4強。

 三垣監督が就任して2年目となった昨春も全国4強入りを果たした。だが、リーグ戦は開幕2連敗から始まった。しかも会場は網走から約360km離れた苫小牧。約6時間のバス移動で車内は重く暗い雰囲気が立ち込めた。それでも網走に戻ると練習をした。

「これは罰じゃない。勝つためなんだ」と、三垣監督の言葉を誰よりも本気にして取り組んだのが4年生たちだった。

 精神的支柱だった前・主将の田辺直輝は「まだ絶対できる。諦めるのは早い」とチームの先頭に立ち、前・副将の松本大吾(全足利クラブ)は次戦で決勝打を放つと、さらに8連勝後に行われた優勝決定戦でもサヨナラ打を放った。

 全国の強豪が集う全日本大学野球選手権でも冬場に取り組んできたウェイトトレーニングの成果を実感できた。田辺が「周りの大学よりも体が大きくて、これだけのことをやってきたんだと自信が持てました」と話すように、堂々とした戦いぶりを見せた。

 準決勝では優勝した明治大に1対5で敗れたが7回までは1対1と競り合った。田辺が「相手が(東京)六大学でも“同じ大学生なんだ”と後輩たちも分かってくれたと思います」と振り返るように、今や大学日本一も夢ではないところまで来ている。

「人間的にも大きく成長できた」

 そして今年も強打の三塁手・ブランドン大河(沖縄・石川高)と、最速151キロのストレートを投げ込む185cm右腕・中村亮太(千葉経済大附高)がドラフト候補としてNPB球団から注目されている。

 また、多くの部員たちが卒業し、社会へ巣立っていく。神奈川出身の田辺は現役を引退し一般就職により関東に戻る。

「高校(長野の佐久長聖)の時にこれ以上田舎に行くことは無いと思いましたが、ここはもっと田舎でした(笑)。でも野球だけでなく人間的にも大きく成長できましたし、網走の人はとても温かくて応援もたくさんしてもらいました。本当に楽しい4年間でした」

 東京では既に桜の開花発表がなされたが、網走での開花予想は5月2日。オホーツク海にはまだ流氷が残る。だがそれをも溶かすほどの思いが、30年変わらず今もなおこの地では燃え続けている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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