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ブラジル悪童フットボーラー更生記。
ロマーリオ議員、名解説エジムンド。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2020/03/23 20:00
セレソン、バルサなどで類稀な決定力を見せたロマーリオ。悪童ながらセカンドキャリアはしっかりとしている。
アドリアーノは今、経済的困窮か。
タレントの宝庫ブラジルでも「傑出した才能を持つ」と言われたのが、「インペラトーレ」(皇帝)ことアドリアーノ。プロレスラー顔負けの巨体で、左足から強烈無比のシュートを放った。
リオで最も危険なファヴェーラ(貧民街)の出身で、麻薬密売組織どうしの抗争が絶えない環境で育った。幼友達の大多数が犯罪組織の構成員となり、その多くが命を落としている。
フラメンゴの下部組織育ちで、17歳でトップチームでデビューし、19歳でイタリア・セリエAの名門インテルへ入団。期限付き移籍したパルマ(当時、中田英寿も在籍)で結果を出してインテルへ復帰すると、以後は大爆発。ブラジル代表にも招集され、2004年のコパ・アメリカで優勝に貢献。得点王に輝き、MVPにも選ばれた。
ところがその直後、父親が急死。そのショックを癒そうと酒に溺れる。すると練習に身が入らず、プレーの質が急降下。2006年W杯に出場したものの精彩を欠いた。
2008年にインテルを戦力外となり、古巣フラメンゴへ。しかし顔見知りの犯罪組織幹部との交遊が伝えられ、2010年にはガールフレンドと口論して木に縛り付けたと報じられた。
2010年にフラメンゴを退団し、その後、ローマ、コリンチャンスなどに短期間在籍したが、2017年以降は所属クラブがない。最近は、経済的困窮が伝えられている。
上記は有名選手に限った例である。ただ現役時代と引退後を問わず、かなりのブラジル人選手が人間関係、酒、金銭、女性などで深刻なトラブルを起こしている。
知人のブラジル人記者は「彼らの多くが貧しい家庭の出身で、十分な家庭教育と学校教育を受ける機会に恵まれなかったからではないか」と説明する。
ロナウジーニョはニュータイプ?
かつて空中エラスチコ、ノールックパス、背中パスなど独創的なプレーを披露したロナウジーニョは、ブラジル人選手のトラブル史においても新たな分野を開拓しつつある。
パラグアイでの今後の取り調べと刑罰が注目されるが、現在のような苦境を迎えたことを謙虚に反省し、今後は真っ当な人生を歩んでもらいたい。
ロマーリオ、エジムンドのように、かつては名うての悪童だったが近年は“更生”した(と当面は見受けられる)例もあるのだから。