猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス宜保翔の活躍が「収穫」。
コーチも驚く打撃技術と素人っぽさ。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/03/21 09:00
オープン戦では7試合スタメン、全12試合に出場し、打率は.344。開幕一軍へ猛アピールした。
飲み込みが早く、モノマネも得意。
「例えば、一番最初に守備を見た時、普通に股を割って正面で捕ることができなかったんですよ。全部、体の横でシングルで捕っていた。だからまずはしっかり股を割るところから始めました」
昨年の春季キャンプで、宜保は毎朝、他の選手より早くグラウンドに来て特訓した。後藤コーチがサッカーボールを転がし、宜保が股を割ってそのボールをお尻で止める、という練習を繰り返した。
他にも驚かされることがあるというが、「それはそれで、伸びしろなので、いいと思う」と後藤コーチは言う。できないことがあっても、宜保は飲み込みが早く、すぐにできるようになった。
「新しいことも、違和感なく自分の動きの中に取り入れられるセンスがある。だから誰かのモノマネをするのもうまいですよ。バランスコーディネーションに優れている。まだまだ伸びますよ」と後藤コーチは期待を寄せる。
俊足だが、打球を「上げる意識」で。
昨年は9月6日に一軍デビューを果たし、その後、初安打も記録した。しかし昨年と今とでは、「全然違う。スイングの感覚がいい」と宜保は手応えを語る。
「去年はヒットを欲しがった打席が多かったんですけど、今年は内容を求めて、どうやって振ったかを重視している。まったく別の感覚で打席に入っています」
50メートル5秒8の俊足が宜保の武器だが、今年は打球を転がすのではなく、「上げる意識」で打席に入っていると言う。
「ゴロはできるだけ打たないようにして、とにかく上げる、遠くに飛ばす意識。フライアウトはオッケー、ぐらいの感覚で打っています。去年は逆に、転がそうとしていたんですけど、ピッチャーはゴロを打たせにくるわけなので、上げにいったほうがちょうどいい感じでヒットになるかなと思って。そういう意識でフルスイングするようになったら、感覚がよくなりました」
オープン戦で安打を重ね、着々と開幕一軍を引き寄せてきた。ただ、無観客試合の雰囲気には物足りなさを感じていた。
「ちょっとやりづらいですね。もっと、ヒットを打った時の歓声が欲しいです。ワーッと盛り上がりたい。今はベンチで『よっしゃー!』みたいに言ってくれるだけなので。やっぱり、お客さんがメインというか、盛り上がる感じが好きなんです」
2年目のブレイクを予感させる宜保は、たくさんの観客の前で開幕を迎える日を心待ちにしている。