猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス宜保翔の活躍が「収穫」。
コーチも驚く打撃技術と素人っぽさ。
posted2020/03/21 09:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
シーンと静まり返った京セラドーム大阪に、乾いた打撃音が響く。無観客での試合はなんとも寂しいが、その中でも、初球から思い切りよく振り切る宜保翔のスイングは爽快だ。
3月15日まで行われたオープン戦で、オリックス2年目の19歳は、二塁や遊撃で出場し、初戦から6試合連続ヒットを記録するなど、安打を重ねて.344の打率を残した。
ホームでの初戦となった3月3日の千葉ロッテ戦では、1番セカンドで先発出場。3回に訪れた第2打席で二塁打を放ったが、それよりも、西村徳文監督は初回の打席での積極性を評価した。
「守備とバッティングは別なんで」
1回表の守備では、サードゴロ併殺という場面で、宜保の二塁から一塁への送球がそれてエラーとなり、失点につながっていた。その直後の1回裏、先頭打者の宜保は、初球から果敢にスイングした。結果的にその打席はショートゴロに終わっていたが、西村監督は試合後、こう語った。
「普通はああやってタイムリーエラーをした後というのは、初球を見てしまいがちなんですけどね。あの直後に、初球から振りにいったという積極性は、評価してあげないといけないのかなと。そういう積極性が、いい結果につながっているんじゃないかなと思います」
しかし宜保に、1回表の守備から直後の打席に入るまでの切り替えについて聞くと、少し意外そうな表情を浮かべた。
「そんなに何も考えてないですね。守備とバッティングは別なんで。タイミングが合えば振っていこう、という感じでした」
宜保にとっては、積極的というよりも、自然体だった。後日、こうも語っていた。
「逆はあります。守備をやっている時に、打席の中の失敗を『クソー』と思う時はあります。でも、打席の中で守備の失敗を思い出して『あー』とは思わないです。正直、楽しいですもん、打撃のほうが。だからもったいないじゃないですか」