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2014年のドラ1・松本裕樹が変貌!
自己最速の152kmが証明したもの。
posted2020/03/21 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ドラフト1位でホークスに入団して6年目を迎えた松本裕樹が、3月14日に行われたオープン戦の広島戦(PayPayドーム)で152キロの快速球を投げ込んだ。
「出てました? じゃあ、自己最速を更新ですね」
初回、3番の堂林翔太に投じた6球目がそれだった。
「自分ではどの球が152キロだったのか気づきませんでした。自分としては今日のストレートが良くなかった。だけど思っていたよりもスピードが出ていましたね」
この日は3回で70球を費やして走者も再三背負う苦しい投球だったが、結果的にはソロ本塁打の1失点で切り抜けた。力強い直球で押し切ったのだ。
正直、こんな松本をプロに入ってから見るのは初めてだった。
「昔の姿とは全然違うからね……」
イメージで言えば、相手打者の打ち気をかわす投球術に長けていて、それを実践するコントロールの持ち主。
よく言えば、上手い投手。ただ、先輩投手からは「おじさんピッチング」と揶揄されることもあった。いわゆる若さでどんどん押すタイプではなかった。
昨年までの一軍通算成績は29試合に登板して4勝7敗、防御率4.29。昨シーズンは7試合1勝1敗、防御率4.01だった。
正直、物足りなかった。
「昔の姿とは全然違うからね……」
プロ入り前を知るスカウトたちが複雑な表情を浮かべるのを幾度となく見た。
松本はもともと規格外のポテンシャルを秘めた選手だ。盛岡大附属高の3年生春にはストレートの最速を150キロに乗せた。さらに多彩な変化球を操ることも当時から評判だった。