球体とリズムBACK NUMBER
マンUにやっと現れたアイドル候補。
B・フェルナンデスの創造性と人情。
posted2020/03/13 19:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
REUTERS/AFLO
満を持してプレミアリーグに移ったポルトガル随一の才能が、悩める名門の救世主となりつつある。
ブルーノ・フェルナンデス、現在25歳──。
マンチェスター・ユナイテッドは1月下旬、昨夏にもスポルティングと交渉したこの多才なMFをついに獲得した。出来高を含む総額8000万ユーロ(約95億円)と報じられた移籍金は高額に違いないが、期待の新戦力は早くもその価値を示している。
オーレ・グンナー・スールシャール監督が、「我々に欠けていた重要なピースになりうる」と喜んだニューカマーの加入以来、ユナイテッドは全公式戦8試合で黒星を喫していない(5勝3分)。
その間、フェルナンデスは3得点と3アシストを記録。精緻かつパワフルなキックで数々の決定機に関わっただけでなく、優れたポジショニングとスキル、利他的な振る舞いでチームを活性化させ、クラブ全体の空気まで好転させているように見える。
ダービーでもFKから先制点を演出。
先週末に行われたマンチェスター・シティとのダービーでも躍動した。3-5-2システムのトップ下を任されると、序盤に完璧なタイミングで縦パスを引き出し、ワンタッチでダニエル・ジェイムズに好機をお膳立て(シュートはGKに防がれた)。そして30分を回る頃には左サイドでファウルを受けて、自らボールをセットする。
母国語を共にするフレッジとひそひそと何かを企んでいるように見せた刹那、シティの壁の裏に駆け出したアントニー・マルシャルへ絶妙なループパスを通し、9番を背負うフランス代表FWのボレーによる先制点を演出した。
おそらく練習を重ねたトリッキーな連係と想像するが、この重要な一戦で見事にゴールに繋げたのだから、指揮官やチームメイトの喜びもひとしおだろう。