欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
原口元気が万能型の兄貴分に変貌。
愚痴をこぼさず、泥にまみれて。
posted2020/03/14 11:30
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
プロサッカー選手としての充実感は、所属しているリーグのレベルやチームの順位だけで決まるものではない。もちろん、誰だってチャンピオンズリーグ出場を夢見るだろうし、国内リーグで優勝争いをしたい。来季のヨーロッパカップ出場権を狙える位置につけたら、ファンにもメディアにも注目される。
だからといって、それだけがサッカーではない。
選手として、そして1人の人間としての成長はレベルの高い場所でしかできない――なんてことはない。
ブンデスリーガ2部のハノーファーでプレーする原口元気は今、紛れもなく確かな歩みを見せている。シーズン最初は苦労も多かった。チームは2部降格からすぐの再昇格を目標にしているが、新監督のミルコ・スロムカがチームを掌握しきれずに低迷。原口も監督との意見の食い違いから、練習中に言い争いをすることも少なくなかった。
納得できないままでは、自身のパフォーマンスをコンスタントに発揮することも難しい。1部昇格のキーマンとなるはずがレギュラーからも外されて、じっと耐えしのぐ時期が続いてしまう……。
「こんな苦しいことはないな」
そう思ったこともあったという。だがスロムカが成績不振で去り、新監督にケナン・コチャクが就任してからチームの雰囲気は変わってきた。原口も、見違えるように明るい表情でサッカーをしている。
現地番記者も「良くなったよね」。
誰よりも走り、戦い、チームのために汗をかく。高い献身性はハノーファーの番記者にも称賛されている。顔なじみの記者が、ハンブルガーSV戦後にこう話してくれた。
「原口は良くなったよね。いまは本当にハートのあるプレーを見せてくれている。チームのためにというプレーがすごく増えたと思うんだ。今日も、戦っていたよ、原口は」