ブラジルW杯通信BACK NUMBER
世界のCBの頂点に立つ“モンスター”。
チアゴ・シウバ、故郷でのW杯決勝へ。
posted2014/05/27 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
相手を支配する攻撃サッカーを行なううえで、速くて強くて巧いセンターバックは不可欠な存在だ。
高く押し上げたDFラインの裏に生まれた広大なスペースをカバーし、相手ストライカーとのスプリント勝負を制する。ロングボールを放り込まれても、慌てることなく跳ね返す。個の力で負けることは許されない。
もちろん仕事は守備だけではない。ビルドアップでは、まるで司令塔のように長短のパスを配給することが求められる。プレスにさらされても闇雲にクリアせず、味方につなげる技術と度胸が必要だ。
それゆえに一昔前に比べるとセンターバックの地位が高まっており、比例して年俸も高くなっている。
その頂点にいるのが、ブラジル代表のチアゴ・シウバだ。
このセレソンのキャプテンは、所属するパリ・サンジェルマンにおいて手取りで1200万ユーロ(約16億8000万円)という驚異的な年俸を手にしている。もちろんセンターバックの世界最高額だ。
相思相愛だったはずのバルサではなく、PSGへ。
時計の針を巻き戻すと、そもそもこの“ザゲイロ”(ブラジルのサッカー用語でセンターバックの意味)を本気で獲得しようとしていたのはバルセロナだった。少年時代の憧れのクラブはバルサであり、移籍は実現すると思われていた。
だが、そこに横槍を入れたのが“カタールマネー”だった。パリ・サンジェルマンは移籍金4200万ユーロ(約58億8000万円)と前述の年俸を提示。2012年、チアゴ・シウバはバルサからのオファーを断り、パリを新天地に選んだ。
スペインのメディアは彼を「金の亡者」とバッシングした。だがチアゴ・シウバは堂々と反論した。
「人生は難しい決断の連続でできている。ときに夢に背を向けなければならない。何より僕は家族を養わなければならない。なぜ少ない収入を我慢してプレーしなければならないのか? パリのオファーは新しい挑戦を与えてくれた。正しい道を選んだと信じている」