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錦織と西岡欠場でデ杯3連敗の屈辱。
内山靖崇の悔しさは次に生きるか。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2020/03/09 20:00
新型コロナウイルスの影響で錦織圭と西岡良介の2人が参加できなかった日本。内山靖崇はエースとして悔しさを味わった。
「全員、気持ちの上で難しい状態」
内山は最後の記者会見で、チームと自分が置かれた難しい状況を明かした。
「全員にとって、気持ちの上で難しい状態だった。監督にオファーをいただいた時点では錦織選手も出られるかどうか分からないながら、準備はしていた。西岡も代表に入っていた。ということは、自分はシングルスでは出ない可能性もあった。ところが、(抽選会の登録で)シングルスのナンバーワンになった。また、コロナウイルスの影響でアメリカに入国できない可能性があるとか、いろんな状況があって簡単ではなかった」
そう説明したうえで、すぐに「それを言い訳にしない」と続けた。エースのせめてものプライドだろう。
仲間思いの一面と泥臭いキャリア。
内山は仲間思いの一面も見せた。
西岡が個人戦の日程を優先するとしてデ杯欠場を明かすと、すぐにSNSに〈本当に難しい判断。チーム内では誰も自分勝手だとは思っていないし、よっしーの決断を尊重しています〉と書き、チーム離脱のチームメイトを擁護した。
こうした態度は、13年から常に代表チームにいる中核選手にふさわしい。ただ、内山はシングルスではデッドラバー(消化試合)を除き、まだ勝利がない。ダブルスでは3勝12敗、近年の対戦相手は強豪ばかりとはいえ、数字だけ見れば決してほめられた成績ではない。
身長183センチと体格に恵まれ、ジュニア期にはIMGアカデミーにも在籍、ビッグサーブと華麗なネットプレーのプレースタイルも含め、いかにもテニスエリートだが、実は泥臭く一歩ずつ力をつけた選手だ。
IMGアカデミーでも、錦織のようにすべての短期目標をクリアして「卒業」することはできなかった。昨年のウィンブルドンでは四大大会の予選挑戦15回目にして初めてシングルスでの本戦進出を勝ち取った。
負けからスタートするのが内山という選手なのかもしれない。初めてエースとして臨んだデ杯は屈辱的な完敗に終わった。しかし、彼ならこの悔しさを糧にするはずだ。