テニスPRESSBACK NUMBER
錦織と西岡欠場でデ杯3連敗の屈辱。
内山靖崇の悔しさは次に生きるか。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2020/03/09 20:00
新型コロナウイルスの影響で錦織圭と西岡良介の2人が参加できなかった日本。内山靖崇はエースとして悔しさを味わった。
昨年のフランス戦では奮闘したが。
内山は最終日の第1試合として行われたダブルスに登場した。黒星の悔しさを自分の手で勝利の喜びに塗り替えられるのは、複数の試合を任される主力選手の特権だ。
昨年の決勝ラウンドでのフランス戦で、内山は初戦のシングルスでジョーウィルフリード・ツォンガに敗れたが、ダブルスで本領を発揮した。
前週のツアーファイナルズを制したフランスの強豪ペア、ピエールユーグ・エルベール(ダブルスランキング5位)、ニコラ・マユ(同3位)に食い下がった。第1セットを先取し、最終セットも激しく競ったが、惜しくも敗れた。
岩渕監督の頭にも、このときの内山のたくましさが、残像としてあったのか。
しかし、ダブルスでエクアドルに相対した内山は明らかに精彩を欠いた。前日の疲れに加え、3連勝が必須となったことで気負いもあったのだろう、終始、ショットの質が上がらず、マクラクラン勉とのコンビネーションも噛み合わなかった。
決勝ラウンドに進出し、勝利を挙げることが当面の目標だったが、意気込みはあえなくフェードアウトした。日本は21年のファイナル予選進出を懸けて9月のワールドグループ1部に臨むことになった。
デ杯に人一倍意欲を燃やすだけに。
単複で2敗、敗戦の責任を背負い込んだ内山は、試合が終わってもしばらくタオルに顔を埋め、立ち上がれなかった。記者会見では「勝ちを期待された立場でそれができなかったのは申し訳なかった」と悔しさをあらわにした。
エースの重圧、さらに単複3試合を任された重圧はあったはずだが、「任された立場でベストのプレーをする。エースの立場でも控えでも準備は一緒」とシンプルにとらえた。しっかりマインドセットし、「全ポイント全力で行く」と宣言しながら、結局、ふがいないプレーをしてしまった悔しさは、いかばかりか。
デ杯に人一倍、意欲を燃やす選手だ。まだ若い頃、ヒッティングパートナーとしてチームに呼ばれた際、代表としてプレーする選手を見て「自分もいつかあの立場で」と刺激を受けたという。
前述のように、昨年の決勝ラウンド、フランス戦でも単複で2敗を喫し、「自分のふがいなさと申し訳なさ、悔しさがこみ上げてきた」と悔し涙を流した。
その対戦のダブルスでは、電光掲示板にぶつかり右手小指を骨折しながら、痛み止めを飲んで最後までプレーした。強豪ペアから第1セットを奪い、あと1セットでチームの勝利とあって、途中棄権の選択肢はなかった。