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ラツィオ、20年ぶりスクデットへ。
インザーギ監督と大穴軍団が駆ける!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/03/07 11:50
前回優勝時のラツィオにはネスタ、ネドベドらといったビッグネームがいた。それから20年。ライトブルーの俊英たちがスクデット獲得の好機を迎えている。
予断を許さないスケジュールの中で。
「スクデットレースでラツィオは警戒すべき相手だ。“タイトルを獲らねばならない”というプレッシャーが彼らにはない。この3月、4月は鍵だ」
4月26日の第34節、この直接対決はスクデットへの天王山になる可能性が濃厚だ。ユベントス会長アンドレア・アニェッリの危機感は強い。
イタリア政府とリーグ機構によって延期もしくは無観客指定された試合情報が日々更新され、すでにスケジュールには大幅な混乱が生じている。コロナ・ウイルスによる被害拡大の状況によっては、カンピオナートの完遂すら危ぶまれている。事態は今後も予断を許さない。
陸の孤島のような練習場に1万人。
「フォルメッロ練習場まで」
昔、有能フロントとして知られるターレSDに話を聞く機会をもらえたので、はるばる出掛けたことがある。ローマ市内でタクシーを拾って目的地を告げたら、遠すぎるし場所がわからないから、と断られた。
別の運転手はOKしてくれたが、彼の車載ナビでも正確な場所がわからず仕事仲間や奥さん、方々に電話しながら1時間、ようやく送り届けてもらった。
着いたところは陸の孤島と言うに相応しく、周囲には高い松林がうっそうと茂る他、何もない。電車もない。バスもない。猪と鹿は出没する。あまりに殺風景な立地に、なるほどこれならサッカーに集中できるわけだと妙に納得してしまった。
そんな僻地に昨年末、1万人が集まった。
ユベントスを下して勝ち取ったリヤドでのイタリア・スーパー杯の後、初練習を公開したところラツィアーレ(=ラツィオ・ファン)たちが大挙して押し寄せた。練習場に繋がる1本道は大渋滞となり、練習開始時間に遅れる選手が続出したほどだ。
スタンドを埋め、タイトル獲得を祝う1万人の大声援を見たベテランDFステファン・ラドゥは「鳥肌がたった」らしい。
インザーギ監督は、無観客試合に難色を示した1人だ。もちろん感染防止の重要性は理解しているが、プロサッカーはファンのためにあるという信念がある。