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36歳・長谷部誠の止まらない成長。
豊富な経験、知性、誰より熱い心。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/03/04 07:00
10数年前は30代に入るとサッカー選手はピークアウトすると見られがちだった。そんな固定概念を覆す選手が増えた中で、長谷部誠もその1人である。
鎌田「ハセさんは目立っていた」
77分、フランクフルトの守備が乱れた。
CBがつり出されたが、最後のところで相手シュートをブロックしたのが長谷部だ。観客からは大歓声が起き、ソウが抱き着いて叫んでいた。
また、奪ったボールを確実に次の攻撃につなげていくプレーも見事だった。2点目、3点目の起点も長谷部だった。自陣でパスを引き出して、素早く前線にパスを展開したことから生まれた2点目、そして、左サイドで相手の縦パスをカットしたところから仕掛けた攻撃が3点目につながったのだ。
そんな長谷部の活躍に、鎌田も助けられていた。
「ハセさんは普段あまり目立つキャラではないですが、今日はすごく目立っていたと思う。(ボールを)取ってからのファーストボールをうまく前線に当てたり、今日は8番(ソウ)が結構動き回っていたので、そのスペースを埋めたり。わかりづらい部分が多いかと思いますけど、今日のハセさんは、すごく目立っていたかなと思います」
ドイツ人記者も頷くほどの説得力。
長谷部は、気づけば再びなくてはならない存在となっていた。地元紙フランクフルタールンドシャウも「チームの頭脳。中盤のリベロとしてゲームを構築している。ボールを要求し、攻撃を作りあげていく。チームにとって欠かせない」と称賛した。
第23節のウニオン・ベルリン戦でもフル出場を果たした長谷部。素晴らしかったELザルツブルク戦から一転、チームは低調になってしまった。試合後のミックスゾーンではドイツ人記者が長谷部を囲み、そのドイツ語に耳を傾けていた。
「コンスタントさに欠けている。1つの試合で素晴らしいプレーを見せたと思うと、次に今日のようなプレーをしてしまう。そこが僕らの問題。ローテーションを多くしているが十分なクオリティはある。今日はシンプルにメンタリティが足らなかった。1対1の競り合いや最後のところでやり切る力、そこが大事。僕らは自分たちのメンタリティを変えていかないといけない」
真剣な表情で頷くドイツ人記者。どんなメンタリティをみせるべきか。それを体現する長谷部の言葉だけに説得力が違う。
失ったと思われたポジションを取り返し、さらにレベルアップを果たし、またリーダーとしてチームを引っ張る立場に戻ってきた。経験に裏打ちされたインテリジェンスと今も心で燃え続ける情熱。長谷部の成長は、まだ止まらない。