炎の一筆入魂BACK NUMBER
ドラ1森下暢仁は本当に「良い」?
カープのエース大瀬良の答えは……。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2020/03/03 19:00
大分商高、明大を経てドラフト1位で入団。3月1日の中日とのオープン戦では3回1安打無失点。
エース大瀬良も褒めるバネ。
森下にはシーズン序盤だけでなく、シーズンを通した活躍が期待されている。そんな活躍に太鼓判を押すのは、1年目に10勝を挙げて新人王を獲得した大瀬良だ。
「すべての動きにセンスを感じる。細いけどバネもある。(体も)ちょっとずつ大きくなっていくと思う。(自身の1年目と比較され)全然上でしょう」
ともに休日を返上して行ったキャッチボールでは、大瀬良が即席で教えたスライダーをすぐに試投して曲げてみせた。投球に組み込むまでの精度ではないとはいえ「いいスライダー投げていましたよ。器用なのでうらやましい」と教えた側が苦笑いしていたほど。
そんな大瀬良とは2月8日のフリー打撃登板から練習メニューが重なるようになった。メニューが同じであれば、自然と共有する時間も増える。首脳陣の狙いか、偶然か分からないが、この時間の共有がまた新人森下にプラスとなったような気がする。
回り道してきたからこそ、ヒントになる。
大瀬良は助言を惜しむことはなかった。チーム内での立場も変わってきたことでもとからある周囲への気配りや目配りが自然とできるようになった。
「良いことも悪いことも含めて、いろんなことを経験してやってきた自負はあるので。自分の経験の中で伝えられることは伝えようとは思っています」
森下とも食事をともにしながら何でも話を聞いてきた。
若い選手に言葉がスッと入ってくるのは、大瀬良が天才型ではないこともあるだろう。1年目に新人王を獲得しながらも、2年目には白星に恵まれず中継ぎに回った。その後はケガもあり、納得のいく球を投げられない時間も過ごした。回り道しながらも登ってきた道程に、若手へのヒントが転がっている。
一般社会でも同じことがいえるが、若手がどんな先輩につくかは意外なほど大きな影響を与える。そういった出会いもまた、“持っている”選手の証かもしれない。