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吉岡里帆を育て、長嶋茂雄も活用。
阿部慎之助二軍監督「見られる効果」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/02/07 19:00
紅白戦で生還した増田陸(左)をグータッチで迎える巨人・阿部二軍監督。
「遠慮なく伝えられているのは凄いね」
「阿部チームが非常に元気があってね、投手も野手もいいところが目立っていたという感じがしますね」
試合後の原辰徳監督の第一声ももちろん二軍の若手への評価からだ。そして“実戦初采配”だった阿部監督評はこうである。
「ベンチでの言葉とか動きに対して、非常に意思が出ている。遠慮なく伝えられているのは凄いね」
やろうとしていることが、しっかり選手に伝わっている。まだキャンプ4日目。それでもその実感を一、二軍の両監督が共有できた試合だった。
「選手を1面にしてあげてね」
「選手を1面にしてあげてね。オレはいいから。阿部監督、初采配、初勝利とかいらないからね。紅白戦だから。ちゃんと目立った選手を記事にしてもらいたいし、それが彼らの自信になる」
試合後の囲み取材。阿部監督はこう語って報道陣を見回した。もちろん監督ばかりが目立っても、そこに集まった視線が選手へと移らなければ意味がない。そんな思いを込めた言葉だった。
ただ、そうはいかないのがメディアの常で、翌日のスポーツ各紙は、やっぱり阿部監督の見出しが踊っている。
でもそれも悪いことではないのだろう。
いまは監督が注目の的でも、人が集まり多くの視線が注がれることが、何より選手の緊張感を生んで、己を磨く力になるはずだ。
選手に降り注ぐノックの雨や叱咤激励の激しい言葉による熱血指導ばかりではない。
見られることで素質が開花する。そんな阿部効果を感じる今年の巨人宮崎キャンプだ。