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宮市亮、ザンクトパウリで完全復活。
「ケガする前より速くなっている」 

text by

島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byGetty Images

posted2020/02/08 09:00

宮市亮、ザンクトパウリで完全復活。「ケガする前より速くなっている」<Number Web> photograph by Getty Images

爆発的なスピードで日本サッカーのニュースターとなった宮市亮。雌伏の時を経て、ついにその能力を開花させつつある。

約3年間の厳しく辛いリハビリ。

 2010年12月にイングランド・プレミアリーグのアーセナルへ加入してから、宮市のプロサッカー人生は終始ケガとの戦いに費やされてきました。

 その負傷歴を簡単に列挙すると、右肩負傷、右足首靭帯損傷、右ハムストリング損傷、左膝前十字靭帯断裂、右膝前十字靭帯断裂などなど、枚挙にいとまがありません。

 特にショッキングだったのがアーセナルとの契約が解除されて、フリーでザンクトパウリへ移籍した直後に負った左膝前十字靭帯断裂。そして約1年後に復帰して間もなく見舞われた右膝前十字靭帯断裂の大ケガでした。

 すなわち宮市は、ザンクトパウリへ移籍してから約3年の間ずっと、厳しく辛いリハビリに明け暮れていたのです。

 この間、ザンクトパウリのクラブ、そしてサポーターは常に宮市の輝ける未来を夢見て、その復活に熱い期待をかけていました。

 だからこそ2018年9月21日、ブンデスリーガ2部第6節のインゴルシュタット戦で戦線復帰し、途中出場で決勝ゴールをマークした際は、サポーターたちが拍手喝采して彼の帰還を祝福したのです。

まるで居合斬りのように切り裂く。

 そんな宮市の勇姿を観るために、ここミラントーア・シュタディオンに赴きました。

 今節の相手チーム、シュツットガルトには4児のお父さんである遠藤航がいます。試合前から高揚感を抑えられませんが、なんと、こんな黄金カードに日本人取材記者は僕ひとり。試合後のミックスゾーンでふたりを捕まえられなかったらどうしようと心配が募るなか、このクラブ独特の選手入場効果音である船の汽笛が高らかに鳴り響き、舞台装置は整いました。

 現在ブンデスリーガ2部3位のシュツットガルトは3-5-2で、遠藤は中盤のアンカーでスタメン。同12位のザンクトパウリは4-1-2-3で、宮市は「3」の右ウイングで同じくスタメンです。

 今季の宮市は目下リーグ戦19試合中18試合に先発し、フル出場は17試合と、ヨス・ルフカイ監督体制下では完全な中核。しかも右ウイング以外に右サイドバックも任されるなど、マルチな貢献を果たしています。

 試合が開始されてからしばらく、僕の座るメディア用の席周辺ではザンクトパウリのサポーターが「リョー! リョー!」と絶叫し続けているのですが、それもやむなし。なんたって、スタンド脇のライン上には常に宮市が凛とした姿で立っていて、味方からパスを受けるとキッと前を向き、その勝負に一切の躊躇なし。

 まるで居合斬りのようにスパッと相手を切り裂いて、その一陣の風が駆け抜ける度にスタンドのボルテージが高まっていきます。

 ああ、ゾクゾクする。やっぱりスピードって魅力的だなぁ。しかも宮市のプレーには外連味がないから、彼がボールを持つ度にこちらまで体が前のめりになってしまうんですよね。

【次ページ】 ワンタッチのクロスでアシスト。

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