スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
香川真司がマドリー戦で覆した
「期待外れ」の声と、潜む悔しさ。
posted2020/02/07 11:50
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
今季のコパデルレイは、準決勝以外のラウンドが一発勝負で行われている。
しかもカテゴリーが下のクラブのホームが舞台となるため(同カテゴリーの場合は抽選で決める)、これまでのホーム&アウェー方式よりも番狂わせの可能性は確実に高まった。
実際、セグンダBのクルトゥラル・レオネサやバダロナがプリメラ上位のアトレティコ・マドリーやヘタフェを破り、2部のミランデスがセルタとセビージャを下して8強入りを果たしている。
しかし、それが逆にトップクラブの指揮官たちを慎重にさせ、大胆なターンオーバーを控えさせるケースもある。
1月29日、サラゴサがコパデルレイ4回戦で対戦したレアル・マドリーもそうだった。
主力中心のマドリーにサラゴサは……。
CL3連覇の偉業を成し遂げたジネディーヌ・ジダンは、意外にも選手時代を含めてコパでの優勝経験がない。マドリー自身、今世紀はまだ2度しかタイトルを獲得していないこともあり、ジダンは極めて慎重な采配を見せた。
主力クラスで招集外としたのはカゼミーロのみ。控え組の起用は前線の4枚とGKのアレオラにとどめ、不動の4バックと中盤を支えるクロース、バルベルデは外さなかった。
対照的に、昇格争いの渦中にあるサラゴサはビクトル・フェルナンデス監督がリーグ戦重視のターンオーバーを公言。4日前のヌマンシア戦から8人の先発を入れ替えてマドリーとの大一番に臨んでいる。
香川真司もこうした背景の下、リーグ戦での“温存”を経て先発起用された1人だった。
香川は第5節までに2ゴールを挙げた開幕当初こそ好印象を残したが、その後は体調不良や負傷離脱が重なる中でコンディションが低下。出場時間も徐々に減り、一時は1月中に移籍する可能性まで報じられた。
そのような流れの中、フル出場したマジョルカとの3回戦では久々に好調時のパフォーマンスを発揮したのだが、この日のプレーはいよいよ完全復活を期待させるものとなった。