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宮市亮、ザンクトパウリで完全復活。
「ケガする前より速くなっている」 

text by

島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byGetty Images

posted2020/02/08 09:00

宮市亮、ザンクトパウリで完全復活。「ケガする前より速くなっている」<Number Web> photograph by Getty Images

爆発的なスピードで日本サッカーのニュースターとなった宮市亮。雌伏の時を経て、ついにその能力を開花させつつある。

「足の状態もまったく問題ないです」

 ザンクトパウリはウィンターブレイク明けの前節のゲームでグロイター・フュルトに0-3の完敗を喫していました。

「そうなんですよね。この前は全然上手くいきませんでした。でも、今回は中3日でシュツットガルトが相手ということで、『何が何でもやらなきゃいけない』というチーム内の雰囲気があったんです。本当に3日前の試合が良くなかったですから、『ここ(ミラントーア)でやってやるぞ』という思いでいました。試合前のミーティングではルフカイ監督から『最初のツヴァイカンプフ(1対1)が大事だ』とも言われていたので、それは見せられたかなと思います」

 落ち着いたトーンで話す彼の姿に逞しさを感じます。今一度、あの爆発的なスピードに思いを馳せ、現在のプレー感覚について本人に聞いてみました。

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「僕自身、何度も何度もケガをして、その間にいろいろな取組みをしてきたんですけども、ここに来て、ウィンターブレイクに入る前からだいぶコンディションも上がってきて、今は自分のスピードに自信を持っています。足の状態もまったく問題ないですし、むしろケガをする前よりも速くなっているのは数字の上でも表れているんですよね」

 本当に良かった。いやー、嬉しい。正真正銘の復活ですね。

現地記者もみるみるうちに笑顔。

「いやー、本当に感慨深いです。僕自身、何度も不甲斐ない思いをしてきました。ずっとここのスタジアムの観客席からピッチを眺めていて、『いつか、ここで戦いたい』と思いながら……。その間、『俺は何をやっているんだ』ともどかしく思うこともありましたけども、こうやって今、コンスタントに試合に出られるのは嬉しい限りです。本当に、周りの人のサポートがなければ、僕はここには立てていなかったと思うんです。そんな方々に感謝しながら、自分自身、プレーでその恩返しができたらなと思っています」

 僕との会話が終わると、彼は「こんな寒いところまで、わざわざ来てくださってありがとうございます」とお辞儀をして、「リョー、リョー」と呼んで待ちわびる現地記者の囲み取材へと歩を進めていきました。

 少し近寄って彼の言葉に聞き耳を立てると、ドイツ人記者が「英語で話そうか?」と言うのを制して「ドイツ語で大丈夫」と返して流暢に話しています。

 記者の皆さんがみるみる笑顔になって、その空間だけ、心の温度が何度も上昇したみたいに蒸気が立ち上がっています。ここにいる誰もが彼のプレーに一喜一憂し、その幸せを享受しているのです。

【次ページ】 サポーターの寵愛を受けながら。

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#宮市亮
#ザンクト・パウリ

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