セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
サンプドリア移籍決定の吉田麻也。
ラニエリも「主役になれる」と歓迎。
posted2020/02/08 11:50
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Uniphoto Press
日本代表DF吉田麻也がサンプドリアの最終ラインに加わった。プレミアリーグでの豊富な経験から貴重な即戦力センターバックとして期待されている。
新天地のサンプは、22節を終えたセリエAで16位。降格圏の18位ジェノアとの差は勝ち点4しかない。残留争いをサバイバルするうえで重要な守備固めの助っ人として、吉田はイタリアへ呼ばれたのだ。
2月5日には、かつて柳沢敦も汗を流したボーリャスコ練習場でフィジカルメニューや戦術セッションをこなした。9日(日本時間)のトリノ戦でセリエAデビューを目指す。
吉田は最初の機会から全開でプレーして、ラニエリ監督をはじめとする周囲にインパクトを残す必要がある。
なぜなら、新しく入ったクラブは明日をも知れぬ境遇にあるからだ。
会長はクラブを78億円で売りに出した。
サンプドリアの現会長であるマッシモ・フェレーロは今、クラブを6500万ユーロ(約78億円強)で売りに出している。
映画事業プロデューサーを本業とする彼は、2014年にクラブ経営権を前オーナーであるガッローネ家から無償で譲り受けた。
道化師然とした奇行で知られるフェレーロは、自身の持ち株会社「ホールディング・マックス」社に、サンプドリアの経営権と映画関連事業を分けて管理させているが、後者の抱える負債が放漫経営により150億円近くにまで膨らんでいるため、その補填のためにサンプドリアが犠牲にされる、という話だ。
一刻も早く資金化したいがために、フェレーロは遅くとも数カ月以内にはクラブを売り飛ばしたいと考えている。
サンプドリアというクラブ自体の収支は、2019年度決算で純利益が見込まれるほど良好で、チームには歴史も人気もある。欧州各国で見聞する「サッカー史上最も美しいユニフォームは?」という企画では、青地に白赤黒の横縞の伝統あるユニが必ずランクインするほどだ。
クラブの売買は資本主義の経済活動の一環だから、この世界では決してネガティブな話題とは言い切れない。ただし、それによって現場のチームが動揺することだけは避けるべきだ。