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「ああ、リバプールの一員になった」
南野拓実が移籍初戦で高ぶった瞬間。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2020/01/06 15:30
デビュー戦こそ持ち味を出し切れなかった。それでも交替時の拍手、クロップ監督の抱擁は南野拓実への期待度の大きさの現れだ。
「やっぱり、激しかったですね」
ベンチに下がった南野が上着を羽織るまでのわずかの間に、試合が動いた。
後半26分。リバプールは18歳のジョーンズが強烈なミドルシュートを決めて均衡を破り、本拠地の盛り上がりは最高潮に達した。この一撃が決勝点となり、チームは主力で固めたエバートンを撃破。控えメンバーが中心ながらも、プレミアリーグで首位を快走する勢いを持ち込んだかのようだった。
試合後間もなく、取材エリアに現れた南野の表情は淡々としていた。口ぶりにも浮ついたところはない。
「合流して時間もあんまりなかったし、監督も『いつも通りの自分でプレーすればいいよ』って言ってくれてたんで。そのまま、いつも自分がやっている通りにプレーしようと思ってゲームに入りました」
続いて、プレミアリーグと同様の環境でプレーしてみた感想。
「いやあ、やっぱり激しかったですね。今までやった試合の中で一番激しかったんじゃないかって思いますけど。まあでも、それがプレミアリーグだと思っていたし、別にびっくりすることはないっていうか。その中でも普通に、僕以外にも若い選手がプレーしていますし、僕も普通にプレーできたかなって思いますね」
クロップが気に入ったプレーとは?
昨年12月31日に初めてチーム練習に参加し、準備期間はわずかしかなかった。チームメート全員のプレースタイルを把握することはもちろん、顔さえも「覚えていない選手の方が多いかもしれない」という。連携にうまくいかない部分があっても仕方がない。
それでも「新人」に対するクロップ監督の評価は上々だった。
「彼はスーパーだった。素晴らしい。まさにわれわれが求めていた選手。(南野にとって)よく知らないチームでの初戦だし、すでに完成されたチームの中で(のプレー)は難しいこと。その中でこのような試合を見せたことや理解力、技術は素晴らしく、姿勢も並外れていた。難しい局面で先頭に立ってプレスをよく仕掛けてくれたし、それも気に入っている」
多少のリップサービスが含まれた感はあるものの、熱血漢の監督はそう言った。