マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
村上宗隆の36本塁打と184三振。
プロで本塁打を“普通に”打つ男。
posted2020/01/06 19:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
最終回は2019シーズン、セ・リーグ最下位に終わった東京ヤクルトスワローズ。高津新監督を迎えて挑む今季のキーマンは、昨年大ブレイクしたあの男でしょう。
年が明けて、2020年はオリンピックイヤー。
何かとスポーツの話題はそちらの方に奪われがちになるのだろうが、プロ野球界にも楽しみな存在が何人もいる。
中でも、ヤクルト・村上宗隆のプロ3年目の動向が今から楽しみで仕方ない。
昨年の「村上宗隆」の豪打ぶりは強烈な印象を残した。
143試合、つまりペナントレースの全試合に出場して、リーグ3位の36本のアーチを描き、チーム2位の96打点をマークして、184三振はダントツで両リーグNo.1だったが、四死球だって79。シーズン出塁率は0.332。ただの「一発屋」なんかじゃなかった。
1年目のイースタンで、17本塁打を奪っていた村上宗隆。
なんだか縁があって、見に行った試合でいつも放り込んでくれたみたいに4本のホームランを直に見せてくれたが、その4本ともが「打った瞬間……」という文句なしの大アーチ。
そんな“驚弾”をぶっぱなしておきながら、ろくにその軌道も追わずに、当たり前のような顔でダイヤモンドを回り、打たれた投手も、打球を振り返りも悔しがりもしない。
そりゃそうだ、うかつな失投をやられたわけじゃない。追い込んだ後の、渾身の「勝負球」を弾き返されていた。完全な「力負け」だったからだ。
清宮幸太郎とのタイプの違い。
ホームランを打つのが、普通のことなんだ……。
昼になればメシを食うように、当たり前のこととしてホームランを放つ。ホームランを打つために、プロ野球に入ってきたヤツ。
そんな“匂い”を強烈に感じ取ったものだ。
一昨年、同期の清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)のことを「稀代のアベレージヒッターの逸材」と書いたことがある。
彼が100弾近く打っていた高校野球の最後の頃だったから、ずいぶんと“異論”をいただいたものだ。
「稀代のアベレージヒッターの逸材」と書いた理由ははっきりしていた。
清宮幸太郎選手の打ち損じが、“前後”がずれたものだったからだ。
投球の軌道にバットを入れていく、つまり投球を線で捉えるバットコントロールの技術は天下一品。その分、打ち損じるのはタイミング的に詰まるか、泳がされるか……つまり、ミートポイントを前後方向で間違えた時だ。
したがって、打ち損じは凡打になる可能性が高く、三振の数はそれほど多くならない。