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板倉滉がオランダで増した説得力。
“金メダルは無理だろ”の声を覆せ。
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byAFLO
posted2020/01/03 11:40
板倉滉の表情、背中からも頼もしさが漂い始めた。迎える東京五輪イヤーでどれだけの成長を見せてくれるか。
いい意味でしっかり文句を言いたい。
試合に出続けることで自信を深め、それによりチームの内容が向上する。いいサイクルが回り始めたことで9月にはフルメンバーのA代表に初選出され、確かなステップを踏んでいることは誰の目にも明らかだった。
しかし、表向きは順調に進んでいるように思えるが、その内実は少し違う。海外での生活を含めて難しさを感じながら日々を過ごす板倉の姿があった。
「フローニンゲンはすごくいい街だけど、基本的には1人。チームの仲間と出掛ける時は出掛けるけど、頻繁に行くわけでもない。たまにどうやって時間が過ぎているんだろうと思うときがあります(笑)」
もともと板倉は人懐こい性格で、友達や知り合いが多い。だから、日々気兼ねなくあれこれ言える友人が周りにいない状況はこれまでと大きく違う。チームメイトと出かければある程度のコミュニケーションは取れるが、言語面で細かいところまで伝えられないことに悔しさが募っている。
「もっと言いたいですよね。いい意味でしっかり文句を言えるようにしたい。バッと言われたときに、まだすっと出てこない。だから結構1人で考えることが多くなってしまう。やっぱり悔しいし、練習中でも言われっぱなしで終わるのは選手としても良くないですから」
スタメンを奪われているようではダメ。
一方で、こういった経験ができているからこそ、自分が成長できているとも感じる。
「もちろん今までもサッカーを第一に……何をするにしてもサッカーを考えてやっていましたけど、より一層サッカーのことを考えるようになったと思います。チームのためにプレーしつつ、その中でどれだけ自分が上にステップアップしていくかを考えるようになっている。
それはすごく自分にとってもいいことだなと。環境の中で勝手にそうなったところはあるけど、本当にサッカー中心の生活だし、それは変わったところだと思います」
12月に入って板倉は急に先発を外されるようになった。
ここまでフル出場を続けていた中で、特別悪いパフォーマンスを見せていたわけでもない。予想外の出来事に困惑するところもあるが、様々なことを経験してきた男は、自分自身に目を向けてこの困難を乗り切ろうとしている。
「もう1回気を引き締めて……ではないけど、もう1回奪い返しに行かないといけないという気持ち。次のステップに行くことを考えるならば、スタメンを奪われているようではダメ。試合に出つつ、そこでさらに目立っていく存在にならないと、もう1個上のステップにはいけない。そこはここからの課題だと思います」