セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
実録・無法ウルトラスに潜入(2)
「オレたちのイ中間」と白い煙。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2020/01/06 11:15
中村俊輔を讃えるゲートフラッグ。それを掲げるクルバは、やはり違法行為の温床だった。
抗争の末に5つのグループが。
その頃、レッジョの町には全部で5つのウルトラス・グループがあった。
最大勢力が、町の北側にある旧市街区を縄張りにしている我らが「ボーイズ」で、構成人数は約600人。次に大きいのが「イッリドゥチビーリ」で、500人ほどのメンバーがいた。中心街エリアの「クックン」は400人程度で、町の南側の「ジェッビオーネ」と「ヌオーヴァ・グアルディア」はどちらも100人規模だった。
同じチームを応援する者同士が気軽に寄り合って語り合える場所があったら嬉しい。
だが、どこかの店で一杯やりながら、じゃとても財布がもたないし、百人単位の応援用具を保管するにもある程度の広さを持った屋根のある場所が必要になるから、いっそのこと自分たちで事務所を構えて“根城”を作ればいい。固定費や税金なんてどうにでもなる。
イタリア中にいるウルトラス・グループの成り立ちはだいたいこういうものだ。レッジョの町も過去の抗争や離合集散の末に、現在の形に落ち着いたのだという。
白い煙と、違法活動の一部。
長い髭の古参メンバー、ジャンフランコがおもむろに口を開き、「誰か、紙持ってるか」と尋ねた。
全員が首を振ると、彼はそのへんにあった新聞紙を1枚取り、丁寧に10cm大に裂いた。懐にあったクシャクシャの小さなビニール袋から乾燥藻草を粘土で練ったようなものを取り出すと、マールボロ・ライトだったか普通の紙巻き煙草をばらした中身と丁寧に混ぜ合わせた。
そして、それらを紙片の上に均等に乗せ、器用にクルクルと巻いた。口に咥え、火を点け、ゆっくりと吸い込み、白い煙を吐いた。
平静を装いながら、僕の頭のなかでは警戒アラームが最大音量で鳴り響いていた。
クルバが大麻の温床であることは知識のうえでは知っていたし、僕も当時は喫煙者だったからスタジアムに漂う、明らかに一般に売られている紙煙草と異なる匂いがそうなのだろうな、と感づいてもいた。
それは、ウルトラスの違法活動の一部だった。欧州のサッカーの現場にあるリアルだった。