熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
独占。恩師クルピが南野にエール。
「香川真司の存在がタクミを……」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2019/12/23 12:00
ブラジルでの直撃取材に応じてくれたクルピ氏。セレッソ大阪で香川、南野の才能を伸ばした名伯楽だ。
メディアについて話したこと。
――Jリーグでは、10代でレギュラーを張れる選手は非常に稀です。年齢別日本代表にも選ばれ、評価が急上昇しました。
クルピ「日本の場合、そこが問題なんだ。若くして試合に出ているというだけで、周囲がチヤホヤする。特にひどいのがメディアだ(笑)。しかし、そんな選手は世界ではゴロゴロいる。そのことを本人にも話した。タクミは、私の顔を真剣な顔つきで見詰め、じっと聞いていた」
――この年、セレッソは4位というクラブ史に残る好成績をあげ、あなたはサポーターやファンから惜しまれながら退任します。翌2014年、南野はJリーグで30試合に出場して2得点。そして2015年1月、ザルツブルクへ移籍します。ブラジルでこのニュースを聞いて、どう思いましたか?
クルピ「彼はいずれ欧州でプレーするレベルの選手だと思っていたから、特に驚きはなかった。Jリーグで実質的に2季プレーし、20歳になる年に欧州へ渡ったのは、日本人選手としては理想的だったんじゃないかな」
生真面目な日本人に多いのだが。
――ザルツブルクでは、なかなか試合に出してもらえない時期もありました。それでも、苦労しながらも、着実に成長していった。そして、2018年ワールドカップ後、日本代表にも頻繁に招集され、しっかり結果を出し、今や代表の主力となっています。
クルピ「欧州へ行ってから、動きの質とポジショニングが向上したんじゃないかな。Jリーグより格段に厳しいマークをかわすこと、スペースへ走り込んでパスを呼び込むことなどを体得した。守備面でも、長足の進歩を遂げている。それは、本人が試合に出るため、そして結果を出すために一生懸命考え、練習を積んだからだろう。
これは生真面目な日本人選手に多いのだが、ただやみくもに練習してもダメ。効果的な練習をすること、効果的な努力を積み重ねることが重要なんだ。その点、タクミには選手としてのみならず人間としてインテリジェンスがあったし、自分を信じて努力を続ける才能も持ち合わせていた。彼の最大の長所は、賢さじゃないかな」
――精神面での成長も感じますか?
クルピ「元々、フットボールが大好きで、この道で絶対に成功するんだ、という強い気持ちを持っていた。外国で生活し、厳しい世界でもまれたことで、精神的に一層逞しくなった」