欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
クラシコの魔性を生む10万人の力と、
最高に綺麗なカンプノウの夕焼け。
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2019/12/18 11:40
カンプノウと言えば大音量のイムノと鮮やかなコレオグラフィーが代名詞だが、バルセロナ随一の夕焼けスポットでもある。
住宅地にあるのに馴染んでいる。
最上段からの夕日が最高に綺麗だなとか、天気が良いから、早めに行ってピッチ脇で読書でもしようとか。
大雨が降るとカメラマンがピッチに出るための通路が水浸しになってしまうとか。
そしてヨーロッパ各地のスタジアムを訪れるようになり気づいたのは、10万人近い収容人数を誇るスタジアムが住宅地にあるにも関わらず見事に馴染んでいること。
周りにはあまり高い建物がないにも関わらず、スタジアムから1本道を外れるだけで、スタジアムが見えなくなってしまう。
大きく3階層に分かれているスタジアムの半分近くが地下に掘り下げて作られているからだ。
そのためカメラマンは重い荷物を背負って、階段を上り下りすることになるのだが、この景観を守るためなら文句は言わない。なお最上部にある記者席にはエレベーターで行けるらしいのだが……。
日建設計の人々もサッカー好きだ。
こんなカンプノウも、コンペの末に選ばれた日本の設計事務所、日建設計によって、改修の時を迎えている。
公開されている完成予想図には、壁面がなく大きなコンコースに取り囲まれ、大きく姿を変えたスタジアムが描かれている。
それでもあまり地元の人たちからも反対の声を聞かないのは、新しく生まれ変わったイメージの中にも、しっかりと引き継がれるカンプノウの根幹を感じ、これからも生活に溶け込んだイメージができるからだろう。
何度か日建設計のスタッフとフットサルをしたことがある。
日本人もスペイン人のスタッフもみんなサッカーが大好きだ。そんな彼らだからこそ日本の設計事務所ながらコンペを勝ち抜くことができた。
きっと彼らはカメラマンルームも刷新し、エレベーターも取り付けるだろう。
惜しむらくは、新しいスタジアムの客席上部は大きな屋根によって上空を囲まれる。バルセロナで一番バルセロナらしい夕焼けスポット(個人調べ)が見られなくなってしまうかもしれない。