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クラシコの魔性を生む10万人の力と、
最高に綺麗なカンプノウの夕焼け。
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2019/12/18 11:40
カンプノウと言えば大音量のイムノと鮮やかなコレオグラフィーが代名詞だが、バルセロナ随一の夕焼けスポットでもある。
クラシコ試合開始15分前は……。
10万人のファンが一番待ち望み、興奮し、声を張り上げるのは「El Clasico」――伝統の一戦――で間違いない。
宿敵レアル・マドリーとの一戦は、選手だけでなくファンの一戦でもある。
カンプ・ノウの最上段に登る。
隣に座るスペイン人カメラマンが、「満席になると思う?」と聞いてくる。
「ちょっと怪しくない!?」と答える。
この大一番でもキックオフ15分前だというのに、7割くらいしか埋まっていないように見える。このままではクラブが用意しているモザイクも不発に終わってしまう。
「こんなところまで登ってきたのに、綺麗な写真が撮れないかもねー」なんて、言葉を交わす。スペイン人でさえ、間に合わないかもしれないと思っている。
キックオフ8分前、不思議なことにバルサのイムノが流れ始める頃、ちゃんと客席は埋まり、綺麗なモザイクアートが完成する。
スペイン人のアバウトなようでサッカーに関してはギリギリ間に合わせてくる辺り、ちょっと感心する。「スペイン人じゃない、カタランだ」と怒られるかもしれないが。
独立運動の影響で無観客の一戦。
一度だけ、10万人のファンの居ない試合が行われたことがある。
2017年10月1日に行われたリーガのラスパルマス戦。
カタルーニャの独立運動の影響によるものだった。
おとなしいと言われるカンプノウのお客さんとはいえ、ひとりもいないとなると、普段聞こえない選手の声や審判の叫び声、ピッチ上空に吊り下げられたカメラが動くときのワイヤーの音から、キーパーがスパイクの裏でポストを叩く音、最上段からのラジオアナウンサーの馬鹿みたいな実況まで聞こえてきて、カメラマンたちも談笑しながらの撮影だった。