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引退語るも「丸く」はなってない!
本田圭佑「僕の生き方を見て判断して」
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2019/12/12 07:30
「ある意味、半年間プレーしていないので引退選手みたいな」と入団時に語った本田圭佑だが、実際の試合ではブランクは感じなかったそう。
単純に東京五輪に出たい、というだけではない。
「スルツキ監督が出て行く前の2試合は、僕がチームの責任を託されたわけですが、そこで期待に応えられなかった。申し訳ないと思っています。そしてスルツキ監督は出て行った。では僕は、このまま(フィテッセに)居座るのかというところの、自分のモチベーション、自分のプライドみたいなところは、ちょっと頭の中を整理しないといけないなと思います」
本田は「自分がもっと意義を感じる場所で競争したい」と言う。
もし金髪の日本人選手が「今21歳で、これからオランダでキャリアを刻むんやったら」、このままフィテッセに残って何ら問題はないだろう。また、来年の東京五輪を見据えれば、オリンピック世代も多くプレーするエールディビジでコンスタントに試合に出場し、活躍することが得策とも言える。半年間の浪人生活の末に、せっかくフィテッセで出場機会を得ることができたのだ。
しかし、どうやら本田の頭の中には、それとは別に“終焉”という「価値観」があるようである。
「もっと意義を感じる場所で競争したい」
「10年前と今は全然価値観が違った人生を生きている。1日の重みも違う」
ミラン時代とは打って変わり、20人程の報道陣が集まったひっそりとしたフィテッセでの会見で、さりげなく「引退」の可能性を口にしていた本田。サッカー選手として残された時間の少なさを自覚しているからこそ、「もっと意義を感じる場所で競争したい」と話すのだろう。
また、いつか必ず訪れる個体の消滅としての「死」も意識するからこそ、本田は、攻めの姿勢を忘れないのだろう。
「チームのバランス」を優先するという「立ち回り」は、欧州での道を切り拓き始めた「10年前」に比べれば、一見すると丸くなったようにも見える。
だが“金狼”は、烈火のごとく反論する。
「丸くなるも何も、引退に向かっているのでね。ただ、丸くなったかどうかは、僕の人生の生き方を見て判断して貰えればいいですね。僕がビジネスなどでどれだけリスクを背負っているのかを見て、丸いかどうかを判断してくれればいいと思います」